第28章 無欲と深愛※
「ちょっと!離しなさいよ!!この暴力女!」
「だって離したら付き合ってくれないじゃないですか。」
そりゃあそうだ。
何故この女の買い物に付き合わなければならない?
炊事担当ならば勝手に一人で行けば良いのだ。
「当たり前でしょ?!離しなさい!馬鹿力!!」
「もー、何でそんなに目の敵にするんです?少しくらい歩み寄りましょ?一週間経って私を認められないならそれはそれでいいです。でも、大人なんですから普通に話くらいしませんか?」
「は?!あんた私のこと馬鹿にしてんの?!餓鬼っぽいことしてって思ってるってことね?」
「そうです。だって事実ですよね?取り付く島もないほど暴言を吐かれたら普通の話もできませんよ?少しくらいちゃんと話しましょうよ。」
怒りの感情は見て取れない。
淡々と事実だけを述べて、理解を求めるほの花が腹立たしいほど大人の対応をしているように見えて、全身が震えた。
これ以上、虚勢を張ったところでこの女の中で自分が年上なのに餓鬼っぽい精神の人間だと思われるのも癪だ。
仕方なくその言葉を受け入れることにした私は初めて彼女と向き合った。
「…分かったわよ…!話せばいいんでしょ!逃げないから離してちょうだい。」
「本当ですか?!良かった!」
納得したことを伝えればすぐに掴まれていた手を離してくれるほの花にただ話がしたかっただけだと言うのは間違いないらしい。
「で?!何の話がしたいのよ…?早くして。」
「良かった…!相談したかったんです!」
「相談…?悪いけど、期間を延ばせやら天元を諦めろって相談なら受け付けないわ。」
言葉を変えたとしても相談と言う名の命乞いに過ぎない。そんなことをされたとしても私の決意は揺らがない。
何を言われようと無駄なことだ。
それなのにその女はにこやかに首を振る。
「え?そんなことじゃないです。買い物に付き合ってと言ったじゃないですか。あの三人にいつもの御礼で贈り物をしたいんですけど、何が良いと思います?」
「……は?」
てっきり命乞いをしたいがための相談かと思いきや、買い物の相談…?
本当にただの相談ではないか。
何を考えているのやらこの女。
したたかさまで兼ね揃えているならば、なかなかの策士だ。
私は真意を探るべくほの花を見つめた。