第28章 無欲と深愛※
「えええー?!もー!良いですって…!ほの花さんは大変なお仕事をされてたんだから!」
「…まきをさん!違うんです!ちょっと邪な気持ちがあって…。家事やらないって瑠璃さんに言われちゃってるからそうさせてくれませんか?少しは認めてくれるかもしれないし…。だから協力してほしいんです…!」
朝餉が終わるとほの花さんが家中の敷布を集めて洗濯をし始めた。確かに今日は晴天だし、よく乾くことだろう。
でも、天元様がいないのだから私たちが彼女を守らなければ!と思ったのに鼻歌混じりで洗濯をしているほの花さんにため息を吐きながら声をかけると、私たちに休暇をくれるという。
大変な任務を終えて、やっと一息ついてるというのにそんなことはさせられない。ただでさえ瑠璃さんの件で気を揉ませているのに。
だから断固反対をしてみるが、そんな風にお願いされてしまえば反対することのが悪いような気さえして二の句を噤む。
ほの花さんのことだから瑠璃さんのことは建前で本当に私たちに休暇をくれようとしているのだと思うけど、こうやって狡猾なフリをしてくれてるだけだ。
そういうところなのに…。瑠璃さんに分かってほしいのは。
でも、ほの花さんはそんなところをこれ見よがしに出したりしないし、きっと私が言ったところで瑠璃さんは余計に腹が立つだけだろう。
天元様が何でこの人にこんなに優しくて、愛してるのか分からなければ堂々巡りだ。
ほの花さんなりになんとか理解してもらおうとしてるのは分かるので、仕方なく協力することにした。
「…わかりました。では、ありがたく…。」
「はい!まきをさんから皆さんに伝えてもらえますか?宜しくお願いします!」
そう言うと再び鼻歌混じりに敷布を洗い始めたほの花さん。
瑠璃さんの敷布も取りに行っていたのに冷たくあしらわれていたから此処にあるのはこの家の元々の住人六人分だけ。
罵詈雑言を言われても少しも嫌な態度を取らないほの花さんを尊敬するし、天元様の恋人がこんな素敵な人だって早く分かってほしいと心から思った。