第28章 無欲と深愛※
宇髄さんは心配でたまらないと顔に書いたような状態で次の日の朝早く遠方の任務に向かった。
後ろ髪を引かれるのかこちらを何度も振り向く姿はいつもの音柱とは思えないほど繊細さを感じさせる。この任務が終わったら宇髄さんも二日休暇を取ると言ってくれてたので私はそっちのが楽しみなのだが、今の状況であれば不謹慎なことこの上ない。
なんとか「いってらっしゃい!」と大きな声で彼に伝えればやっと少しだけ笑ってくれたので手を振って見送った。
私だって言われっぱなしなわけではない。
瑠璃さんのことは私が片をつけなければならないことだ。
宇髄さんですらもう何を言っても無意味なのだから。
彼のいなくなった部屋に入ると布団から敷布を取り外した。
それを手にみんなの部屋を一つずつ回るとかき集めた敷布をまとめて洗い始める。
手始めに洗濯だ。
今日からちゃんと家事ができることを分かってもらうことにまずは手を尽くそう。
こんなことで認められるとも思っていないが、事あるごとに碌に家事もしないくせにと言われるのでせめて暇の間はちゃんとやろうと思った次第だ。
「あ!ほの花さん!いいのに!折角のお休みなんだから休んでていいんですよー?」
「まきをさん!ちょうど良かった!三人に伝えたいことがあったんです!」
「伝えたいこと?何ですか?」
洗濯場で敷布をゴシゴシ洗っていると後ろから声をかけてきたのはまきをさん。
いつも元気な彼女もこの二日間だいぶ元気がないように感じる。
彼女もまた私のことを心配してくれているのだろう。彼女だけではない。雛鶴さんも須磨さんもみんな私のことを気にしてくれているのは見て取れる。せめて心配させないようにと笑顔を向ける。
「はい!今日から三日間一日ずつ皆さん交代で休んでください!いつも家事ありがとうございます!たまには代わりますので!」
だけど、瑠璃さんに言われたからというのも大きいが、これはたまーにしていることだ。
たった一日ずつなんて申し訳ないが、休暇のうちはなるべく手伝えるし、少しは負担が減るだろう。
それに休暇と言われて自分の休む日がなければ結局宇髄さんに怒られるのだから全日と言うわけにもいかないのだ。