第28章 無欲と深愛※
「瑠璃さん、豆大福食べますか?」
「食事中に豆大福勧めてくる馬鹿が何処にいるのよ。話しかけないで頂戴。今すぐ出て行くならその豆大福頂くわ。」
隣で怒りのあまりぷるぷると震えている宇髄さんの様子を見て、顔を引き攣らせると慌てて言葉を続けた。
「あ、ごめんなさい。須磨さんが買ってきてくれたのでお裾分けって思ったんですけど。もちろん後で召し上がってもらっても…。」
「だから出て行かないなら話しかけないで頂戴。淫女が。」
「あー、じゃあ此処に置いときますね!」
「捨てとくわ。淫女にもらった物なんて汚くて食べられないわ。」
瑠璃さんは物凄く頭の回転が良くて、私の言葉に間髪入れずに返ってくる言葉が全て罵詈雑言でとにかく凄い。
徹底しているので本当に傷つかない。
最早、そうすることが彼女の仕事なのだとすら思っている。
冷たく突き返されてしまって、捨てられるのは折角須磨さんが買ってきてくれたのに申し訳ない。
「じゃあ、全部食べちゃいますね」と断りを入れるが、「雌豚にでもなる気なの?」と今度は笑われてしまってついに堪忍袋の尾が切れた宇髄さんが瑠璃さんの胸ぐらを掴み上げた。
「テメェ…黙って聞いてりゃぁ良い気になりやがって。ほの花に謝れ。」
「う、宇髄さん!ダメだって!落ち着いて〜!どうどう〜!」
「俺は馬か!?もう我慢ならねぇ!!!派手にぶん殴る!!女だろうと関係ねぇ!!」
「えーーー!女子に手をあげるなんて最低だよ!宇髄さん!!」
「テメェはどっちの味方なんだよ!?あん?!」
掴み上げた手を掴み返すと"落ち着いて"と目で訴えかける。
宇髄さんがあまりに怒りで打ち震えているので背中を撫でて宥めるが治まらない様子で鼻息が荒い。
「あんた、何でそんな女がいいわけ?良いのは顔くらいじゃない。」
「わぁ、ありがとうございます!!褒めてもらえて嬉しいです!」
「褒めてないわ!!顔しか能がないなら遊郭で働けば?間違いなく人気者でしょうね。太客を紹介してあげる。」
「ゆうかくって何ですか?」
「そんなもんほの花に教えんな!ぶっ殺すぞ?!」
後ろから耳を塞がれて会話は其処で途絶えてしまったけど、これでは折角の慰労会が台無しだ。
話をするのは今ではないと思い、暴言に返すことはせずに黙っていることにした。