第28章 無欲と深愛※
一度口付けてしまうとそれだけで終われないのはいつものこと。
でも、今日はいつにも増して止められなかった。
あまりにほの花が素直に俺の愛を受け止めてくれるから。いつも自分なんて…と謙遜ばかりしているのにこんな風に「ありがとう」なんて言われれば、少しばかり照れ臭い。
好きな女を守るのは当たり前のことだし、ほの花に愛を伝えるのも当たり前のこと。
つーか、伝えたくて仕方ねぇんだから別にそこに労力はない。勝手に口から溢れ出すのだ。
最初は確かにほの花の言う通り、ちゃんと想いを伝えてやらないといけないと思っていたかもしれない。
遠慮の塊のほの花は俺の恋人になったのに少しも実感がないような素振りが多かったし、どこか申し訳ないと思っているようだった。
元嫁三人と関係を解消したのは俺の一存。
だからほの花が気に病むことは少しもないのに、いつだってアイツらに気を遣っていることが多い。
それは今も変わらない。
そんなほの花だからこそ、想いを伝え続けたいと思ったのだ。そうでなければアイツはいつか気に病んで俺の前を去るのではないか?と気が気でなかった。
今もそう感じることもあるほど。
好きだからそばにいたいし、添い遂げたいと思っている。だけどほの花はきっと俺と添い遂げたいと思っていても、その欲望を平気で捨てることができる女。
無欲なのだ。
そこに誰かの想いや自分の欲望を通すのが申し訳なくなる出来事があれば、何の迷いもなく身を引くと思う。
俺がいくら隣にいろと言っても。
共に添い遂げようと言っても。
今のほの花ならまだそうすると思う。
悪気はない。ただ無欲なのだ。
自分の欲を通すことで誰かが傷つくのであればそんな欲は要らないと思う奴だからこそ、俺は懲りずに想いを伝え続ける。
いつかきっと誰が何と言おうと俺の隣に当たり前にいて良い存在なのだと気づいてくれるのをひたすら待っている。
嫉妬もするし、独占欲もある。
どんな手を使ってもほの花を他の男に譲るなんて身の毛もよだつ思いだし、考えただけでも吐き気がする。
「ほの花、愛してる。」
ただそれだけ。