第28章 無欲と深愛※
宇髄さんの屋敷へ向かいながら、考えることは瑠璃さんのことだ。
彼女にどうしたら納得してもらえるのだろうか。
結局のところ、私のことを認められないと思ってるからあそこまで反発しているのだろう。
折角明日からしばらく暇なのだ。
たまには家事も率先してやろう。そもそもいつも任せっきりにしているのだから雛鶴さん達にも少し休暇が必要ではないか?
毎日毎日炊事洗濯掃除…
あの人数の食事を準備するのも
買い物に行くのも
洗濯するのも
あの広い屋敷を掃除するのも骨が折れるのは間違いない。
順番に休暇を取って貰えば私も手伝えて、瑠璃さんが認めてくれるかもしれないし、一石二鳥だ。
名案を思い付いたと意気揚々と家路を軽い足取りで向かっていると「おかえり」と頭から声が降ってきた。
しかし、見上げた時にはその姿は空にはなくて、後ろから大好きな温もりに包まれた。
「あ!天元ー!お帰りなさい!」
「おお。胡蝶ンとこ寄ってたのか?」
「うん!アオイちゃんとカナヲちゃんとお茶してから帰ってきたよ!」
「そうか。でもなぁ…今からまたアイツがいるかと思うと気が滅入るぜ…。」
後ろから深いため息と共に泣き言が聴こえてくると、先ほどのアオイちゃんの言葉が思い出される。
── 音柱様がほの花ちゃんへの愛を態度で示してくれてるからでしょ?
本当にそうだなぁ。
宇髄さんはいつだって私への愛を恥ずかしげもなく伝えてくれるし、それが彼の普段の姿なのだと思っていたが、よく考えたら私のためなのかもしれない。
そうすることで不安にならないようにしてくれていたのかも。
それならば…どれほど知らないうちに彼に守られていたか考えただけでも頭が下がる。
「…天元、ありがとね?私のために怒ってくれて。」
「はぁ?お前のためってだけじゃねぇし!単純に俺の女に暴言吐かれてド派手に苛つくんだわ!アイツ…こっちが八つ裂きにしてやりてぇっつーの!!」
「そ、それでも…、私のことを大事に思ってくれてるから怒ってくれてるんでしょ?だから嬉しいよ。ありがとう。」
そう言えば、抱き込まれていた腕を解き、体の向きを変えさせるといきなり口づけが降ってきた。
まだ家まではあと少し。
それでも彼は私が止めるまで何度も何度も口づけをしてくれた。まるで愛を伝えてくれるように。