第28章 無欲と深愛※
「お待たせ〜!お茶とお菓子持ってきたよ!ほの花ちゃん、かすてらでも良い?」
カナヲちゃんと日向ぼっこをしていると、アオイちゃんがお盆を持って来てくれた。
その上には、茶色の焦げ目に挟まれた見るからにふわふわとした黄色の其れは見るだけで食欲をそそる。
「わーい!かすてら大好き!ありがとう!アオイちゃん!」
「流石音柱様ね。昨日ほの花ちゃんの好きな甘味を聞いたら「アイツ甘味なら何でも良いと思うぜ」って言ってたもの。」
「え?そうだったの?」
「そうそう。音柱様もいらっしゃったからお出ししようと思って聞いたのに、その後すぐにしのぶ様から部屋に行くなって言われちゃって出せなかったの。どういうことー?」
昨日、二人の間にそんな会話があったなんて知りもしなかった。
カステラを食べ損ねていたなんて悔しいが、いま目の前にあるのでそれは良しとしよう。
しかしながら、理由を尋ねられてしまうと些か私は困ってしまう。
内容的にはこの二人に話せるような可愛いキャピキャピとした恋のお話ではない。生々しい淫猥なその内容をどう脚色して伝えようかと私の脳は全集中している。
「あー、えっと…、宇髄さんと久しぶりに会ったから積もる話があってね!きっとしのぶさんが気を利かせてくれたのね。あははは…」
「ああ、確かに音柱様、凄く嬉しそうだったもの!よかったね?久しぶりに会えて。」
「う、うん!」
積もる話と言うよりも、溜まった性欲を発散しようとされただなんて口が裂けても言えない。
宇髄さんとそういうことをするのは全然嫌じゃないけど、流石に年下の可愛い友人との会話で蜜事に関することなど言えるわけがない。
すると、今までニコニコしながら黙って聴いていたカナヲちゃんが私の首に手を添えた。
「ほの花ちゃん、首どうしたの?赤黒くなってるよ。」
「んえぇ?!あ、そ、それね、い、犬に!犬に甘噛みされて鬱血しちゃったの!!」
"誰が犬だと?!"と宇髄さんの怒りの表情が目に浮かぶが、背に腹は変えられない。
情交のときにつけられた所有印だなんて言えやしないのだから、ため息を吐きながら手でそこを覆った。