第28章 無欲と深愛※
町まで下りてくると、正宗達には先に帰ってもらい、蝶屋敷によっていくことにした。
宇髄さんはまだ帰っていないかもしれないし、昨日話したりなかったおしゃべりをするためだ。
「こんにちは〜!カナヲちゃーん!アオイちゃーん!いますかー?」
玄関先で彼女達を呼ぶとすぐにアオイちゃんが出てきてくれた。昨日の今日なので久しぶりではないのに、帰ってからの瑠璃さんの衝撃に何日も経ったような錯覚を覚えてしまった。
「あら、ほの花ちゃん!いらっしゃい!カナヲなら庭にいるわ!今日はゆっくりできるの?」
「うん!おしゃべりしに来たの。私、しばらく休暇を頂けることになったから。」
「じゃあ、庭で待ってて?縁側でお茶しましょう!しのぶ様はお仕事に行かれてていないけど…。」
いや、しのぶさんとはちょっと昨日の今日で会いにくい。
待たせてもらった部屋で宇髄さんに押し倒されたところを目撃されたのだ。流石に恥ずかしい。できたら会いたくない。
いや、会いたいけど会いたくない。
熱りが冷めた頃に菓子折りでも持って改めてお詫びに来よう…。
昨日の恥ずかしさを胸に秘めて庭に向かうと空を眺めているカナヲちゃんが目に入った。
「カナヲちゃんー!昨日ぶり〜!」
「あ、ほの花ちゃん。今日はどうしたの?」
「産屋敷様のところに行った帰りなの。昨日、アオイちゃんとお茶の約束してたんだけど出来なかったからきたんだ〜。」
聞けば、鍛錬はすでに終わっているそうなので「一緒にお茶をしよう?と誘えば頷いてくれるので、彼女の手を取った。
素直に付いてくるカナヲちゃんはすごく可愛いし、妹のようにも思いつつ、同期であり、友達だ。
話すのがあまり得意ではないのだけど、宇髄さんの話は結構聞いてくれる。
恋の話ができるのは女子ならではなのかもしれないけど、今まで私は恋人の話など出来なかったのだからすごく新鮮で嬉しい。
いつかはカナヲちゃんやアオイちゃんの恋の話も聞けたら良いなぁと勝手に未来を思い描けば心はとても浮き立ってしまうのだ。