第28章 無欲と深愛※
何のことを言っているのか分からずに首を傾げていると真っ直ぐに私に向き合って口を開く。
「鬼殺隊として与えられるお給金を君は彼らに割り振っているよね?」
それは宇髄さんにも伝えてないことなのに、何故産屋敷様がご存知なのか?
目を見開くと、顔を引き攣らせた。
だが、決して全て均等に分けてるわけではない。
お給金が思ったよりもだいぶ多いから、最後の最後まで護衛として仕えてくれた彼らに慰労金を渡しただけ。
神楽家の生き残りとして両親ができなかったことを彼らにちゃんとしたかった。
「そ、それは…、神楽家の生き残りとして両親ができなかったことをしようと思い、慰労金のつもりで…!」
「それならば、今回の任務に関して依頼をしたのは僕だし、鬼殺隊の当主としてその役目を承ろう。」
「しかし…!」
「正宗、隆元、大進だったね?此方に。」
私を通り越して、後ろの三人を見遣ると手元の風呂敷包に手を添えた。
彼らの功績は素晴らしいものだ。それはわかっているが、鬼殺隊ではない彼らにこんな謝礼を渡したら角が立つのではないかと気が気でない。
それは彼らも同じようで後ろで困惑している空気が伝わってくる。
しかし、意を決して正宗が話し出す。
「産屋敷様。此度の任務、我々が役に立てたことを心から嬉しく思います。謝礼の件、とても有難いです。せっかくのご厚意を無碍にするのも心苦しいのですが、受け取る前に確認したいことがあります。」
「何だい?」
前を見据えたまま、正宗の言葉に耳を傾けるが、何を言わんとしているのか見当もつかず心臓はバクバクと音を立てている。
「それを受け取ることでほの花様のお立場が悪くなることはありませんでしょうか?」
「え?」
その発言に驚いた私は思わず後ろを振り向いて彼らを見た。
「我々はほの花様に長年仕えて参りました。今回もほの花様より言われたため、お手伝いさせて頂いたまで。産屋敷様にそれを頂いてしまえば、ほの花様のお立場が悪くなるようであれば我々はそれを受け取ることはできません。」
我慢できなかった。
込み上げるものを。
私のことを案じ、私のことを考えてくれている彼らの配慮が嬉しくて、瑠璃さんに苦言を呈されても何も思わなかったのに、溢れ出す涙を止めることができなかった。