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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第1章 はじまりは突然に




「…君は神楽家のお嬢さんだね?」

優しく穏やかな声色はまるで父のように包容力があり、喉がキュッと締まり体が震えた。
下げた頭を少しだけ上げてみると顔は青白く病に侵されているのは明白で大切に持ってきた薬を慌てて取り出す。

「はい…。母から…頼まれた薬を届けに参りました。」

「何故君が…?と聞いてもいいだろうか?」


そう思うのは当然だ。
恐らく産屋敷様はこの場所をあまり知られたくないのだろう。そうでなければこんなに分かりにくい場所に屋敷を構えない。
両親もここに来る時は"産屋敷様の所へ行く"とだけ言い、詳しい場所を伝えていくことはなかったから。
だから産屋敷様からすれば知られたくない場所を知られてしまったということになるのだ。


「…はい。父と母は…亡くなりました──。」


ちゃんと何故亡くなったのか言わなければならない。そんなことは分かっているのに、声が震えて詰まってしまった。せっかく先ほどの男性が私の体を回復させてくれたのに話さなければならないと言うことはあの光景を再び思い出さなければならないと言うことで、それを考えただけでどうしようもなく息が苦しい。

思い起こされるのは血みどろの遺体たちと変わり果てた父の末路、そして母の最後の言葉。


「…父が….家族を…殺してしまったんだと思います。そして…私がその父に手をかけました…ッ…。」


よく考えたら私は身を守るためとは言え親殺しをしてしまった。あんなに良くしてくれた…守ってくれた父を…。
親殺しは最大の罪──


いくら殺されかけたとは言え、やはり自分が死ぬべきだったのではないか。
この期に及んでそんなことを考えてしまうと涙が込み上げてそれ以上言葉を紡ぐことはできなかった。


それでも産屋敷様は私の言葉を待つようにこちらを見つめてくれていた。

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