第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
一時間もしないうちに先に部屋を飛び出してきたのはほの花と言う女だった。
着物を身に付けながら脱兎の如く部屋から出てきたその女が居間に入ってきた時の驚いた顔ときたら…。
私がいることをすっかる抜け落ちていたのだろう。目を泳がせて襖を閉めると立ち去る足音だけが聞こえてきた。
チラッと見えた白い肌には紅い華が散っていて、早々に天元に愛されたことを物語っている。
それを確認すると漸く襖の前にいて妨害していた護衛官が退いてくれた。
「…お待たせしました。どうぞ。」
何がお待たせしました、だ。
自分の主人の蜜事のための人払いも役目ってわけ?
随分と面白い任務だわ。
それなのに少しも気にする素振りを見せず、居間の卓の前に座ると雛鶴がお茶を淹れ出した。
この小一時間、あの二人のことしか頭になかった私と違い、この六人は何の迷いもなく会話を楽しんでいた。
立ったままの三人の護衛官を見ながら、雛鶴達は卓の前に座り込み他愛もない話をする。
当たり前の日常とでも言わんばかりに振る舞う六人にも腹が立つ。
「あんた達、あんな女の蜜事の手助けなんてして頭おかしいんじゃないの?どうかしてるわ。」
「愛し合ってる二人の邪魔をする方が野暮と言うものです。瑠璃さんもいい加減諦めた方がいいですよ。」
「そうそう。ほの花さんが帰ってきちゃったら天元様と二人きりになることなんてまず出来ません。」
「四六時中、ずーーーーーーっと!ほの花さんから片時も離れませんからねぇ。」
三人の言種に苦笑いを浮かべながらお茶を啜る護衛官も納得したように頷いている。
どうやらこの一連の流れは私に向けた嫌がらせではなく、"いつものこと"ということ?
あんな風に独占欲を露わにした天元をこれから見なければいけないということにも目眩を覚えるが、一週間という短い期間で何としても妻になってあの女の鼻を明かしてやる。
冷静にならなければ、あの女に出し抜かれる。
「なぁ、ほの花は?」
その時、気配もなく今に顔を出した天元は私には目もくれずにあの女の居所を聞いてきた。
すっかり着物を身に付けていて、着衣の乱れはないが、先ほどと打って変わってご機嫌な様子に奥歯を噛み締めた。