第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
その日の夜、俺は雛鶴、まきを、須磨。そしてほの花の護衛だった正宗、隆元、大進に向き合っていた。
どう転がっても止めらんねぇんだから話すしかないだろ。
「単刀直入に言う。ほの花を女として好きになっちまった。雛鶴、まきを、須磨。悪ぃが嫁っつー関係を解消してほしい。」
正座をして向き合い、頭を下げること数秒。情けなくても格好悪くても構わねぇ。
コイツらが納得してくれるためならいくらでも頭を下げる。罵られても受け入れる。
しかし、大方の予想通り三人の顔は笑顔だった。
「やっと言ってくれましたね、天元様。待ちくたびれましたよ。」
「本当本当ー。ずっと私たちのために我慢してくれてたの知ってましたから。」
「全然天元様は悪くないですぅーー!だって私たち家族じゃないですかぁ?天元様が幸せなのが一番ですーー!」
そんな風に言ってもらえることがどれほど有難いことなのか心得ているつもりだ。泣いて縋り付かれるほどつらいものはないのだから。
いや、もし仮にそう言う奴らなら最初からコイツらを想って我慢などしなかった。俺のことを考えてくれる奴らだからこそ、嫁として里を出たし、ほの花が居なかったら恐らくそのまま嫁として生活していただろう。
「…俺は態度に出てたか。」
「「「完全に。」」」
「……返す言葉がねぇよ。」
すると黙って聞いていたほの花の元護衛の正宗がおずおずと口を挟んできた。
「あの、宇髄様。ほの花様は鈍感ですからね?」
「ああ。覚悟してる。でも、もう後戻りは出来ねぇよ。」
「無鉄砲で向こう見ずで猪突猛進で突拍子もないことしたりしますからね?」
「知ってる。」
「でも、本当は甘えん坊で優しくて可愛い妹みたいな存在です。産まれた時からずっと19年間見守ってきました。」
なんだ、この感覚。背筋がピンと伸びる。
目が離せない。
そうだ、家族を亡くしたコイツらにとってもほの花は家族同然だ。
「不束者の妹分ですが、どうぞよろしくお願いします。」
頭を下げる三人に俺も同じように礼をした。
その日、俺はやっとほの花を愛する資格を得た。
"ここからは派手に行くぜ"と心の中で火蓋が切って落とされた。