第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
「ほの花!!」
血相を変えて飛んできた天元は私には目もくれずにほの花と呼ばれた女の元に跪くと優しく彼女の頬に触れている。
その姿に動揺した。
こんな天元を見たことがなかったからだ。
許嫁達に平等に優しかったけど、こんな風に感情を全面に出している彼を見るのは初めてのことだった。
そろそろ天元とほの花と言う女が帰ってくるだろうと予想していた私は玄関先で気配を消して待ち伏せをしていた。
どうせ天元はその女を守るために中の様子を伺うはずだと思ったから。
物の見事に予想通りの行動をした天元に舌打ちすらしてしまう。そんなに大事なわけ。その女が。
天元がいなくなったのを見計らい、玄関の前の塀で鼻歌混じりで立って待っている女と対峙するとその容姿に釘付けになった。
高く結い上げられた長い栗色の髪。
女性にしては高い上背だが、華奢な肢体。
こちらを見つめる瞳は大きくて吸い込まれそうなほどで、小さな顔で全てが黄金比率で整理整頓されたような美しい容姿はまるで人形のようだった。
顔で女を選ぶような男ではないと思うけど、少なからずこの容姿に惹かれたのは間違いないだろうし、それが分かると無性に腹立たしかった。
自分の容姿をひけらかして男を誑かした不届き物の女。雛鶴達の夫である天元を唆し、奪い取った罪は重い。
この女がいなければ、私のことを再び娶ることなど造作もない筈だ。
容姿に免じて、五人目にしてもらえればいいだろう。
しかし、この容姿だ。男など選り取りみどりだろう。天元と並ぶ姿を想像すると確かに釣り合いが取れているかもしれないが、どうせこんな容姿をしているのだからスケコマシの尻軽女に違いない。
「あなたがほの花?」と聞けば、可愛らしい声で「そうです」と答えるその女。
可愛こぶってる姿が益々腹立たしい。
全てを掻っ攫っていったその女を許すわけにいかない。
私はその泥棒猫にまずは一矢報いるため、力の限りに引っ叩いてやった。
ツグコとか言っていたのに受け身も取れずによろめいて塀にぶつかった彼女を見て、その話すら嘘のような気がして私の怒りは最高潮だ。
私を馬鹿にして楽しい?天元。
こんな女、いつでも殺せるんだから。