第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
「いいか?此処で待ってろ。庭から中の様子を見てくるからよ。」
「分かった〜。いってらっしゃ〜い。」
「な、何だよ、その気の抜ける返事は!もっとキリッとしとけ!あの女に油断すんな。」
「はーい!」
「(…絶対ェ分かってねぇええええ)…待ってろよ。」
小さな子どもを諭すように何度も何度も此処で待ってろ、気を引き締めろと言ってくる宇髄さんに少しだけ笑いが込み上げる。
玄関先の塀に背中をつけて待っているとじんわりと汗ばむような陽気に太陽を見上げる。
そこに手を翳していると、足音が聞こえてきたので体制を整えてそちらを向く。
「早かった、…」
もう帰ってきたのかと思って、にこやかに向き合ったそこにいたのは宇髄さんではなかった。
それどころか正宗でも隆元でも大進でもない。
雛鶴さんでもまきをさんでも須磨さんでもない。
でも、服装は彼女達に似たような服を着ている。黒髪を肩で切り揃えられていて、切長のその瞳は強い意志を宿してこちらを射抜いている。
その瞬間、いくら間抜けな私でもそれが誰なのか分かってしまった。宇髄さんが行った方向に目を向けてみるが彼の姿はまだ見えない。
「あなたがほの花?」
凛としたその声に私は背中を正して彼女を見つめる。
どうしたら良いのだろうか。
彼が来るのを待った方がいいのだろうけど、此処で何も発言しないのは返って失礼だし、機嫌を損ねる可能性があるかもしれない。
「…そうです。こんにちは。」
「ふーん…?なるほどね。」
上から下まで品定めをするかのようにジロジロと見られて居心地が悪い。でも、目を逸らせば負けた気分になるので彼女を見つめ続けた。
そうしていると遠くから「ほの花!」と呼ぶ宇髄さんの声が聞こえたのでフッと視線を外すと彼女の纏う空気が一気にドス黒いものに変化したのが分かった。
「…この、泥棒猫が。」
「え?」
どちらにも気を取られていたせいだ。
キッと睨まれたかと思うと振りかぶった手を見上げて、次の瞬間頬に受けた強烈な衝撃に受け身が取れずに塀にぶつかり座り込んだ。
何が起こった?
本当に気を取られた一瞬のこと。それだけでなく明らかに敵意を向けられて女の子に叩かれたことのない私は目を見開いて見ることしかできなかった。