第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
── 俺の…元許嫁が訪ねてきて、お前に会わせろって言うんだ。
それを聞いた私は自分でも驚くほど落ち着いていた。嫉妬に荒れ狂うわけでもなく、悲しみに暮れるわけでもなく。
ただ"ああ、なるほど。"と納得している自分がいた。
だってそもそも宇髄さんはそれほど素敵な人だし、女性に声をかけられずとも町を歩けば彼を見ている人は多い。
そんなこと分かっていたことで、それよりも
彼が私に誤魔化すことなく言ってくれたことが嬉しかった。
適当なことを言って、しのぶさんのところにいてくれと言われれば、師匠の頼みであれば断ることはなかったと思う。その場合、宇髄さんは此処に通ってくれたと思うし、何も疑うこともなくそうしただろう。
それでもちゃんと話してくれて理解を求めてくれたことが嬉しかった。頼ってくれたようで、私を信じて話してくれたようで嬉しかった。
「うん。分かったよ。どうしたらいいの?私はただの継子ってことにしとく?」
ちゃんと話してくれたのだから、彼がやりやすいようにしてくれたら良いと思った。
恐らく目的はその人を説得して帰ってもらうことなのだろうから。
それなのに眉間に皺を寄せるとムニッといきなり頬を引っ張られた。
「んにぃ、ぃひゃひゃひゃひゃーーー!いひゃい!」
「阿呆か、お前は。俺の婚約者って言ったから会わせろって言って帰んねーの。アイツは。今更、ただの継子でしたなんて言って通用するような奴じゃねぇわ。」
「わ、わひゃっちゃ、わひゃっちゃよーー!!」
この人、自分の握力を舐めてるんだろうか?
軽くやられただけなのに指が離された頬はジンジンと痛いし、熱い。
口を尖らせて不満を顔で表現するけど、私よりももっと不満そうな顔話をしている彼に、目を彷徨わせて下を向いた。
「俺の女だって、堂々としてりゃぁいいんだ。アイツに何言われても気にすることはねぇ。会ったらすぐ帰ると思うから、兎に角会うだけ会ってくれたらいい。俺が守るから心配すんなよ?」
つい今まで頬をつねっていた人とは思えないほど優しく頭を撫でられると、再び私も顔が緩んでしまう。
守るからとしきりに言ってくると言うことは弁がたつ人なのだろうか。どんな人であろうと、私ができることはただ一つ。
宇髄さんを好きだと言うことを伝えるのみだ。