第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
「え?!な、何か?変な名前でしたか…?」
悲しそうな顔をする彼に慌てて首をブンブンと振り、否定をする。そりゃあいきなり名前を聞いて驚けば揶揄われているように感じるのも無理はない。
「ごめんね、違うの!私の知り合いが"かまどたんじろう"くんと言う人が今日最終選別を受けるって言ってたの。だからあなたのことか!と思って驚いてしまって…。」
「え?!知り合い…?俺、これを受けること知ってる人なんて鱗滝さんくらい…。」
「うろこだきさん…?」
聞いたことのない名前を出されて冨岡さんの言葉を思い出していた。
"知り合いのような奴"と言っていた。やはりこの子に認識されていないのではないか。
しかし、さすがにそれでは何となく冨岡さんが可哀想な気がしたので名前だけ出してみた。
「あ、あのね、冨岡義勇さんと言う方なんだけど…。」
「えええ?!冨岡さん!!知ってます!え、ほの花さん、お知り合いなんですか?」
「え、いや!そんなお知り合いというか…し、師匠の…友だち…?いや、えと…ど、同僚…?」
いま、ここに宇髄さんがいたら頭を掴まれて上から睨まれそうだ。
"友達なんかじゃねぇ!"という幻聴すら聞こえてきそうだ。
「え、えーと…そ、そうなんですね!よ、宜しく伝えてください!」
「あ、う、うん!伝えておくね。あ!私たち同期だし、多分私のが年上だけど敬語なしで!ほの花って呼んで。声かけてくれてありがとう。」
「こ、こちらこそ!ありがとう。えと、宜しくね。ほの花!」
私は一番下だったから弟はいない。
でも、あまりに素直で優しい竈門炭治郎という少年に弟がいたらこんな感じなのかなぁって想像してしまった。
それしても…冨岡さん、認識されてて良かった。
あんなに無口だからひょっとして自分の名前名乗ってないんじゃ…と余計な心配をしていた自分は相当失礼な女だ。