第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
竈門炭治郎の件がとりあえず収まったことで漸く柱合会議が始まると思ったらお館様が会わせたい人がいるという。
そんなことを柱合会議の前に言うのはあの時以来だ。ほの花が初めて此処にきた日。
あの日、アイツは此処で俺の継子になった。
既に懐かしささえ感じる。
もうあの時に戻ることなんて出来ない。
愛し過ぎてその時の感情など忘れてしまったのだから。
お館様が顔を向けた方に柱の面々も顔を向けると聴き覚えのある足音が聴こえた気がした。
どんどん近づいてくるその足音に俺は半信半疑だ。
(…いや、まさか…。帰るのは明日の筈だよな。でも、…。)
俺がほの花の足音を聴き間違えるなんてことはない。
アイツのものなら足音だって心音だって分かるというのに…。
軽やかに颯爽と聴こえるその足音に胸が高鳴るのを抑えられない。
まるで初めて恋をした餓鬼のようにその姿が見えるのを心待ちにする。
箱が擦れる音な薬箱。
少しだけ鼻歌を歌っているそれは聴き覚えがある。
もう誰かなんて見なくても分かる。
勝手に緩んでしまうその顔を隠すこともなく、そちらに目を向けていると、ゆっくりと現れたその姿に少しだけ鼻の奥がツンとした。
「…ほの花。」
久しぶりに見る彼女は変わらず美しかった。
伸びた髪を高い位置に一つに結び、髪型は変わっていたが、こちらを見て驚いた顔をした後、ふわりと笑った顔はいつものほの花だった。
しかし、ふわりと俺を見て笑ったのは一瞬のこと。
足を止めて状況を確認するとピシリと固まった。
「ふふ、ほの花。お帰り。今回は本当にご苦労だったね。」
お館様の姿を捉えるとその場に跪き、頭を下げたほの花に益々いつものほの花だと目尻が下がる。
「も、も、申し訳ありません!柱合会議とは知らず…!こちらに来るよう言われたのですが、時機を見誤りました…!!し、暫し、外で待っております…!!」
「あれー?ほの花じゃないか!久しぶりーー!!」
……は?
ちょっと待て…。忘れていたが、まだその場にいた竈門炭治郎はほの花を知っているようで、途端に眉間に皺を寄せる。
空気を読めないどころか人の女に俺より早く声かけるなんて…いい度胸してやがる。
俺は拳を握りしめると、竈門炭治郎を睨みつけた。