第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
藤襲山は鬼殺隊によって生捕りにされた鬼が閉じ込められている。そこで七日間過ごすということが合格条件。
閉じ込められているが故、人肉に飢え、人間を見たら襲ってくる鬼達。その鬼の奇襲を掻い潜り、七日間生き残れるかどうか。
「カナヲちゃん、羊羹食べる?はい。」
「ありがとう。」
「薬膳茶もあるよ。はい。」
「ありがとう。」
いつ鬼が来てもおかしくない中でも、食事もしないといけないし、おやつも食べなければいけない。
…と思ってるのは私たちだけかもしれない。
初日に襲い掛かってきた鬼を倒して以降、なかなか鬼と会わない私たちは二人で暇を持て余し、大木の幹に腰を下ろし、持ってきた羊羹でお茶会をしていた。
こう見えて全国行脚の旅をしていたので野宿は慣れているし、カナヲちゃんと楽しく女子旅をしている気分だ。
鬼となったお父様を倒して以来、初の鬼との戦闘は思ったよりも恐怖は感じず、"柱"の鍛錬を受けていたせいか随分と呆気なく感じた。
もちろんこんな鬼ばかりではないと思っているが、ここには強そうな鬼の気配は感じない。
羊羹を一口食べると小豆の甘さが口に広がり、こんなところにいるのに幸せな気分になる。
そういえば"かまどたんじろう"さんは大丈夫だろうか。
冨岡さんが気にしていたと言うことだけでも伝えたいが、最終選別が始まると皆散り散りに去っていったので自己紹介をする暇もなかった。
しかしながら今日で六日目。
明日でこの最終選別が終わると思うとやっと一息つけるが、カナヲちゃんと一緒でなければもっと恐怖でいっぱいだっただろう。
ずっと鍛錬をしてくれていた宇髄さんにも共同鍛錬で引き合わせてくれたしのぶさんにも感謝しかない。
羊羹が一本なくなるとまた少し軽くなった荷物が終わりが近いことを如実に表している。
ここに出発する前にあまりにおやつを詰め込んでいた私を見て宇髄さんが「お前、何しにいくんだよ。」と呆れていたのを思い出すと、つい口角が上がってしまった。