第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
天元は忽然と姿を消したことで、なかなか尻尾を掴めなかった。
どこかでこっそりと暮らしていると思い込んでいたからだ。
小さな集落や人が寄り付かない村、そういう人目につかないところばかりを探していたせいかまさかこんなに堂々と暮らしているとは思わなかった。
つい最近、ふらっと立ち寄ったこの町で買い物をしている雛鶴、まきを、須磨を見た。
一瞬、見間違えたかと思ったが、雛鶴の泣き黒子を見て、間違っていないことを確信した。
何故こんなところに?と思い、悟られないように後を付けた。
そうしたら大きな屋敷に辿り着いたのだ。
堂々としたその風貌に私は最初、後退りをしたほど。
忍は耐え忍び、隠密に行動するのが常。
それなのにこんなに派手な生活をしていると誰が思おうか。
どこか浮かない顔をしている三人も相俟って、天元が好き勝手な生活をしているのかもしれないともよぎった。
選ばれなかったのは…そう!
私が口煩く、こう言う生活をすることに苦言を呈されると思ったからよ。
暫くはあの三人の動向を見守っていたが、天元が昼間に姿を表すことはなかった。
痺れを切らして、屋敷に乗り込めば昔よりも大人の色気を醸し出した天元が私のことを驚いた目をして見ていた。
(…どうやら覚えてくれていたみたいね。)
思ったよりも男ぶりを上げていた彼をもう一度この手にしたいと思った。
その軟弱な精神を鍛え上げると共に私が宇髄家に必要な強い子を産み落とし、今後の繁栄のために彼にもう一度機会を与えてあげるのだ、と。
そう思い、抱きついた彼はあの時とは違う目をしていた。
冷たい目を私に向けると「帰れ。」と突き放す。
騒がしいと思ったのか集まってきた気配はまきをと須磨だろう。
私の姿を見て目を見開いて固まっている。
「…私を嫁にしなかったのは何故?宇髄家繁栄の為により多くの嫁が必要だった筈よ。あなたはその使命を放棄した。私がもう一度叩き直してあげるわ。」
「もう関係ないことだ。俺は此処で愛する女と家族と暮らしていく。だからお前は必要ねぇ。今すぐ帰れ。」
そう言う天元の目は真っ直ぐで少しの曇りもなかった。