第27章 晴れ時々嵐、柱合会議にご注意を※
ほの花たちが帰ってくるのを指折り数え出した頃、昼間から四人の部屋の掃除をし始めた俺たち。
普段こういうことは元嫁達に任せきりだったが、愛するほの花が帰ってくることで有頂天になっていた俺は自ら志願して彼女の部屋に入った。
主人不在の部屋だが、僅かに彼女の匂いがする其処は不在中、何度も訪れては彼女を想い、ボーッと時を過ごしていた。
恐らくほの花が帰ってきたら俺の匂いがすると言われるだろう。
それほどまでに通い詰めたこの部屋の襖を開け放ち、空気を入れ替える。
今までは此処にあるほの花の匂いを少しも逃したく無くて空気の入れ替えは最小限に抑えていたが、もうその必要もない。
やっと帰ってくるのだ。俺の婚約者が。
そう考えるだけで勝手に顔が緩む。
自分にはだいぶ小さい箒を片手に部屋の埃を掃いて集める。
普段やらないけど、帰ってきた時にほの花が綺麗な場所で心から休めるようになればいいと端から順に丁寧に掃いていると、玄関の方から「え?!ど、どうして?」と雛鶴の驚く声が聞こえてきた。
どうしたのかと思い、チラッと玄関を覗いてみると聞き覚えのある声に「天元!」と呼ばれたと同時に懐に飛びついてきたその人物に目を見開く。
しかし、目を見開いたのはそれだけでない。飛びついてきたその人物が自分の唇と俺のを合わせてきたから。
それが口づけだと気づくのに数秒かかってしまい、慌てて引き離したが、思わぬ珍事に呆けてしまった。
明らかにその口づけは俺の望む人のものでは無く、目の前にいた人物が何故此処にいるのか理解ができなかった。
それ程までに遠ざけてきて、もう会うこともないだろうと思っていた。
いや、出来ればもう会いたくないとも思っていた。
「…お前、何で此処に…?」
「久しぶりの再会なのに随分な扱いしてくれるじゃない。天元。」
其所にいたのは里にいた時、許嫁として当てがわれていたが、唯一嫁にする気が起きずに断った相手。
父親は家柄も良い女だからといって決まっていたのだが、父親のやり方を正当化し、俺の考えを理解しないそいつを拒絶し、三人だけを連れて里を出た。
二度と会わない。
会いたくないと思っていたのに…
「…瑠璃。」
何故此処にいる…?