第26章 君の居ない時間※
ほの花様が朝帰りしたかと思うと、鋼鐡塚さんの看護に行って欲しいと朝から護衛一同目をひん剥いて驚いた。
朝帰りなどして宇髄様にどう言い訳するつもりなのだと頭を抱えようかと思ったら、そうではなく蘇生が必要なほど重症だったと聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
あまりに危機管理が薄い彼女に度々頭を悩まされるが、今回は治療の一環で朝までいたと言うことならば仕方あるまい。
なので寝ずの番が早かった自分が買って出て来たのだが、不用意な発言で二人の関係が不義理を働いていたのではないかと怪しまれてしまった。
もちろんそんな事はなく、すぐに否定をすれば納得してくれたのだが。
その時、今当たり前に二人は恋人として過ごしているが、知らない人から見ればそう見えてしまっているのだと思うと肝が冷えた。
しかも、元奥様達が三人もいると言うのも最初驚いた時のことをうっかり失念してしまっていた。
あまりに当たり前で既に気にもしなくなっていた出来事だが、普通の人から見たら確かに嫁が三人いたなんて驚かれるのは間違いない。
そのせいで宇髄様が"スケコマシ"呼ばわりされてしまったことも申し訳なくて仕方ない。
何とかやらかしてしまったことを取り返そうと言葉を重ねるがどうも言い訳がましいし、自分が言っては胡散臭い。
でも、宇髄様は彼女達を平等に扱っていたし、そうなった理由はお父上の方針もあったようだ。
詳しいことは分からないが、彼が決めたことではないのであれば咎めることは勿論出来ないし、すべきではない。
「鋼鐡塚様…。私の失言で誤解をさせてしまいましたが、宇髄様はとても誠実なお方です。スケコマシなどではありません。奥様が三人いらっしゃったのもやむを得ない事情ゆえです。」
「…やむを得ない事情、ねぇ。」
しかし、これ以上は自分がしゃしゃり出て話すようなことはできない。
彼の個人情報だ。
頭を下げて何とか彼の"スケコマシ"という不名誉な称号を取り消して貰いたくてこちらも必死だ。
お世話になっている上、第三者がほの花様の恋人を貶めるようなことなど絶対に許されないのだ。