第26章 君の居ない時間※
「どうぞ。」と差し出されたのは粥に大根の煮物に味噌汁。
男にしてはソツなく食事の支度をしてくれたので、普段からやっているのだろうか。
それとも料理人か?
渡された物を受け取って台に置くとまじまじとそれを見ながら気になっていたことを聞いてみた。
「あんたは普段から料理してんのか。」
「宇髄様の家にご厄介になるようになってからは彼の元奥様達の手伝いをするようになり、できるようになりました。やってみると楽しいものです。」
「なるほどな。」
家でやってんならこの手際の良さも肯ける。
なるほど、柱の元……奥様?
元奥様?
元…嫁?
は?!
はぁ?!
「ちょ、ちょっと待て…!宇髄って男は不義理を働いてるわけじゃねぇよな?」
「え…?あ、いや!そう言うことではありません!!断じて!!」
ほの花が頑なに隠したがっていたのはこっちの理由ではないだろうか。
元嫁がいたとなったのが知られていたらほの花は不義理を働いた尻軽女になるし、宇髄という男は同時期に手を出したスケコマシと言うことになる。
「す、すみません!私が言葉足らずで…!もちろん御納得の上、そうなったのですが…。事情を知らなければそのように感じるのも致し方ありません。しかし、断じて不義理を働いていたわけではありません。ちゃんと諸々の折り合いを付けてからの話です。」
必死に弁護をするが、こうなってしまえばほの花が隠したがっていた理由も分からないわけでもない。
元嫁がいたことを知っているのは自分だけなら構わないが、知っている者が他にもいたら変な噂が立ったら知っている以上補足しなければならないではないか。
(チッ…面倒くせぇな。聞かなきゃ良かったぜ。)
だが、こんなことで命の恩人であるほの花が傷付いたり、尻軽女呼ばわりされるのは腹が立つ。
そんな女でないことはよく知っているからだ。
「秘密にしておくが、お前もあまり他言するな。元嫁がいたとか言う事実はほの花を傷つけることにもなりかねん。あ…?ちょっと待て…達っていったか?」
「三人いらっしゃったので…。」
「おい、スケコマシなのは間違いねぇな!その男は!!」
いくらなんでも元嫁が多すぎるだろう!
どんな男だ。
そんな男のどこが良いのだ、ほの花は!