第26章 君の居ない時間※
ほの花とか言う女と入れ替わりで昨日、一緒にいた男が訪ねて来た。
背中にはこれでもかという量の食べ物を担いで。
「鋼鐡塚様。ほの花様の指示により参りました。お台所を借りても宜しいでしょうか。」
「……お、おお。」
野郎二人が狭苦しい家の中にいると考えただけでも…
むさ苦しいったらねぇ。
看護に来たコイツにそんな失礼なこと言ったらほの花が怒って来そうだから何にも言えないが、こうなったら意地でも早く治してやろうと俄然やる気が出る。
やる気を出したところでどうにかなるものでもないかもしれないが。
「昨夜はほの花様が押しかけたようで申し訳ありませんでした。でも…ご無事でなによりです。」
「あ?ああ…いや、それに関しては…感謝してる。アイツのおかげで助かったんだ。あんたにも面倒なことをさせて悪いと思ってる。」
本当ならば自分が診療所に出向き、そこで治療を受けるべきところほの花の厚意でこうやって自宅で療養できるのだ。
こんなところまで重い荷物を運んで、食事の支度など面倒なことこの上ないだろう。
「いえいえ。ほの花様の思い付きに振り回されるのは慣れてますので。…でも、いつだってあの方は周りの方のことを考えております故、少しばかり猪突猛進なところがありますが、お許しください。」
謝り慣れていると言うか、余程幼い頃よりほの花を見て来たのだろう。まるで兄のように妹の失態を謝るその姿に目を見開いた。
「あんたら三人いたけど、ほの花とどんな関係なんだ。」
ただの興味本位だった。
アイツの恋人は柱の宇髄天元とか言う男だと言うのは分かったが、金魚の糞みたいに付いて回っているこの男達が一体何なのか?どんな存在なのか?
単純に気になったから聞いてみただけのこと。
それなのにこちらを見て、言い淀むその男に言いたくないことだったか、と聞いたことを後悔した。
「…すみません。私の口からは…、詳しくは言えませんが、ほの花様の家に代々仕えていた護衛の家系の者です。」
「…ああ、悪かった。そうか。言えねぇことなら聞かねぇよ。」
申し訳なさそうに頭を下げるソイツに逆に申し訳ない気持ちになり、微妙な空気が流れた。