第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
狭い世界の中でだけ生きてきた私にとって全国行脚をした時はそれは真新しい世界に目を輝かせた。
でも、どこかいろんなことを諦めていたように思う。
"どうせ結婚できないし"
"どうせ女として見てもらえないし"
そんな卑屈な想いが当たり前のように頭の中にあったので、だったら人生楽しもうと思っていた。結婚できなくても女一人でも生きていけるだけの能力を身に付けたかった。
お母様は薬師にしたかったようだったけど、私は歌って踊っていた方が楽しかったし、強く言われたこともなかったので晩年は薬師でもするか…程度にしか考えていなかったのだ。
それがいま、そのとき夢中になってしていたことを全て捨てて、産屋敷様のお薬を調合し、女として見て欲しかったがためにアレほど強くなることに嫌悪感を抱いていたのに、鬼殺隊に入ろうとしている。
人生ってどこでどう転ぶか分からない。
それでも里での経験がここに来て活かされたのは神楽家の末っ子として生まれ、何不自由なく育ったおかげだ。
今日、私は最終選抜を受けにいく。
産屋敷様と神楽家は代々鬼を討つことで共闘していた。その因縁をここで終結したい。
きっと私が生き残ったのは意味がある。
継子として大切に育ててくれた宇髄さんにも報いたい。
向かう先はきっと
鬼のいない世界。
そのためには心血を注ぐ鬼殺隊に私の命も賭けよう。
私は神楽の
陰陽師一族の
唯一の生き残りなんだから。