第5章 実力試験は実戦で【其ノ弍】
「私、ほの花が好きなの。」
それは突然、言われた言葉。
もちろん、私も彼女のことは大好きだったから「私も好きだよ」と返したのだが、その後すぐに首に抱きつかれて唇を奪われたことで私の思考は停止した。
口付けなどしたことなかった私は彼女の行動にとても驚いたし、そもそも"好き"の意味が違うことをこの時初めて知ったのだ。
そもそも女同士でそんな感覚になることすら私は知らなかったし、当然のように男性と結婚して子を授かり…という日常しか頭になかったため、彼女の想いに気づくことはできなかった。
いま思えば、頬を赤らめる彼女を何度も見たことあったし、やたらと手を繋ぎたがるのもそのせいだったのか、とそれを予感させることは幾つもあったというのに私は気付けなかった。
だから驚きすぎた私は思いっきり突き飛ばしてしまい、あまりに軽い彼女はその場で転んでしまう。気づいた時には涙目で私を見つめる彼女に驚きで震えていた自分。
「…ほの花ちゃん、ひどい…っ。」
「ご、ごめん、ごめんね…。私、そういう気持ちは、なくて…、仲のいいお友達って…。」
「突然、悪かった、とは思うけど…突き飛ばさなくても…!う、ふぇ…、っ」
その場で泣き崩れる彼女をよく見ると私が突き飛ばしたせいで膝は擦りむいて血が出てしまっていたし、着物には土がついてヨレてしまっていた。
自分は昔から鍛錬をしていたので腕っぷしは普通の女性より強かったということをすっかりと忘れていたため、怪我をさせてしまった。
女の子ってこんなに弱いんだ。
女の子ってこんなに儚いんだ。
自分が女だからって人より強いのだから男性と同じように女の子に優しくしなくてはいけないんだ。そうでなければ傷つけてしまう。
大切な友だちすら失ってしまう。
もちろん、この日その子と仲違いしてしまったのは私が彼女の想いに応えられないことが主な原因だが、それよりも私は女の子に怪我をさせてしまったことが衝撃的で怖くなってしまったんだ。