第26章 君の居ない時間※
あまりの失礼な物言いに臨戦態勢で立ち上がって口論をし出した私たちを止める者はいない。
何故なら山の中の温泉で、現在絶賛人払い中。
何なら此処でこの人と刺し違えても誰も助けてくれない。そんなことはありえないけども。
最初はこんなつもりはなかったのに、宇髄さんのことを悪く言われたことで腹が立ってしまい、胸ぐらを掴む勢いで喧嘩に乗ってしまった。
「宇髄さんは頭が空っぽなんかじゃありません!!すっごく素敵で優秀な柱なんです!!あなたに悪く言われる筋合いはありません!!」
「いや、絶対変な男だな!あんたみたいに隙だらけの変態女を好きになる男なんて物好きもいいところだ!どうせ、その体が目当てなんだろうよ!」
「なっ!?そんなわけないです!!宇髄さんは贈り物だってよくくれるし、私のこと愛してるって言ってくれます!!」
最早何の言い争いなのか分からなくなってきた。
そもそも助けてくれた人に対して私は些か失礼な態度だっただろうか。
漸くそのことに気づいた私は急に頭が冷えていった。
しかし、私より先に鋼鐡塚さんが視線を逸らして後ろを向いてしまったことで、この口論は終止符を打った。
「……本当にうるせぇ女だが、とりあえず服を着ろ。流石に目のやり場に困る。」
その言葉に私は目を見開く。
そうだ。
そうだった。
そうじゃあああああん!!!
「……っ、てぇ!?いやぁああああああああああ!!!!お嫁に行けないぃいーーーーー!!!」
私の格好といえば…素っ裸。
要するにすっぽんぽん!!!
先ほどタオルを投げつけてしまったことで身に纏うものは何もない。
それなのに怒りに任せて真っ裸で男の人と口論をしていたなんて……。
いや、ここ最近、やっぱり宇髄さんのお嫁さんになりたいなんて烏滸がましいかな…なんて思っていたが、そんなことよりももう行けない…。
この人とまぐわいをしたわけではない。
そうではないが…
間違いなく宇髄さんはこの出来事を知ったら怒り狂うと思うし、私とて今、穴があったら入りたい。
しかも自分の担当の刀匠に素っ裸を見られるなんて…。
もう
控えめに言って
終わった。