第26章 君の居ない時間※
「ひー、疲れたー。正宗達もお疲れー!」
「本当に疲れましたね。四人では限界がありますし、大変ですね。ああ、そうだ。鉄地河原様の使いの人が外に食事を置いて行ってくれていましたよ。」
「わぁー!本当?!お腹ペッコペコー!」
大進が外に置いてくれてあったという籠を持ってきてくれると中には、おにぎりやおかずがたくさん詰められていて良い匂いが部屋の中に充満した。
疲れたが、まだ一日目だし、それは心地のいい疲労感だ。
食事も美味しく摂れるし、自分達の体調も悪くは無い。
此処に来て四人での約束ごとをした。
毎日必ず検温をして、体調の確認をお互いにする。
少しでもおかしいと感じたら感染の恐れがある為離脱すること。
これはお互いを守る為にも必要なことだから徹底している。
食事を摂るのもなるべく離れて唾液や息が届かないところで摂る。
全ては終息のためだ。
楽しい食事では無いし、味気ないが致し方ない。
宇髄さんは…ごはん食べたかな…?
今ごろ任務にでも行ってるかな。
忙しすぎて漸く彼のことを思い出せるほどの心の余裕ができた。
でも、思い浮かぶのは絶対彼の顔だ。
今朝出てきたばかりだというのにもう恋しくなってきた。
籠からおにぎりとおかずを取り出して三人に渡すとそれぞれの場所に戻り、それを無言で頬張り出す。
いつもならば隣には当たり前のように宇髄さんがいて、チラッと見れば優しく微笑んでくれて頭を撫でられる?
夜も今日は彼の温もりがないところで寝るのかと思うと既に寂しくて仕方がない。
はぁ…と深いため息を吐くと籠の中に紙が入っているのに気がついた。
それを取り出してみると、どうやら手紙のようだったので無言でそれを開いてみた。
──やっほー。ほの花ちゃん。
うちの里の者達の診療をありがとう。
少しばかりだが毎日食事を届けようと思うので存分に食べてくれ。
その診療所の目の前にある家を使えるようにしてあるからそこでしばらく寝泊まりしてくれていい。夜10時以降は人払いをしてあるから良ければ温泉があるから入ってくれ。
心配しなくてもワシは覗かないからね!
鉄地河原鉄珍──
一行目を読んだ時点で一瞬手紙を閉じようかと思ったが、内容はありがたいことばかりだ。
食事を摂ったら彼らにも教えてあげよう。