第4章 実力試験は実戦で
ほの花の盛大な悪口に若干舌打ちをすると冨岡に向き合う。
コイツが家に来るなんて初めてじゃねぇか。
「あー…茶でも飲んでくか。」
「いや、無事に送り届けたので帰るとする。」
「悪かったな。でも、どういう風の吹き回しだよ?」
別に悪い奴じゃねぇっつーのは分かるが、とにかく正反対な性格で特に関わることのない男だ。
同じ柱でなければ絶対に関わらない。
「…胡蝶が言ってた。」
「は?何を。」
「宇髄がほの花を溺愛してるから何かあったら手助けしてやれって。」
「は…はぁぁあーー?!」
あの女…あれほど内密にしろと言ったのに…よりにもよって何故コイツ?!
まぁ…口の軽そうな奴ではないが…。
「溺愛っつーかよ、継子だからな!?気にすんのは当たり前だろ!」
「…ほの花は美しい女だと思う。」
「はぁ?だから何だよ。」
「一緒にいれば惚れるのは仕方ない。」
「おい…喧嘩売ってんのか?あん?」
どいつもこいつも俺のことを責め立てたいのか、煽りたいのか一体どっちだ。
しかも、こいつ無表情で女を褒めたぞ。そういう感情あったのかよ。
「…喧嘩は売りに来ていない。すまなかった。ほの花によく休むように言ってくれ。ぶつかった時顔色が良くなかった。」
「お前、そういうことを先に言えよ。疲れてるだけかと思ったから風呂入れって言っちまっただろうが。一人で倒れてたらどうすんだよ。」
めずらしい客に振り回されて、いい迷惑だが、そう言うことならばぶつかったのがこの男で送ってくれて良かった。
「…すまない。ここに着いたら顔色が良くなっていたから失念していた。」
「まぁ、お前で良かったよ。助かった。」
「ああ、では失礼する。」
漸く踵を返して帰路に着いた冨岡の後ろ姿を見送ると、雛鶴達に風呂にほの花の様子を見に行ってくれるように頼む。
しかし、またまきをと須磨がどちらが行くかで喧嘩をし出したのを自分の部屋まで聴こえてきてため息を吐いた。
(…誰か指名しておくんだったな…。)