第26章 君の居ない時間※
宇髄邸を出発すると、隠の人と待ち合わせ場所まで向かい、目隠しをされて刀鍛冶の里へ行くそうだ。
途中で人を変えて行くことで隠の人の中でもそこの場所を知っている人は少数のようで、徹底して隠れ里を守っているのだろう。
産屋敷様のお屋敷もそうだけど、鬼殺隊は徹底している。
陰陽師の里の方が山奥にあったのには変わりないが、そこまで徹底していなかったので突き止められたのかもしれない…と今となってはどうしようもないことを考えてしまった。
向かう先はどこなのか分からないが、この隠の人たちも感染の危険性がある中でこうして運んでくれているのだ。
特効薬があれば良かった。
もっと早く私が薬に興味を持って、里にいる時から母に色々習っておけば良かった。
そうすれば間に合っていたかもしれない。
そんな、たらればの話を永遠と考える私はどうかしているけど、目隠しをされてしまうと思い浮かぶことがどうしても後ろ向きな内容ばかりなのだ。
宇髄さんの元奥様達が何であんなにも寂しそうだったのかは分からないが、悲しませてしまったのは事実で申し訳ないとしか思えない。
せめてあの三人だけでも生きて帰らせないと…。
いや、違う違う。私も帰らないと。
約束したではないか。
こんな風に変なことばかりを考えてしまう自分が情けない。
おぶってもらっていながら首を振ると考えも吹き飛ばす。
「どうかしました?」
「いえ。大丈夫です。すみません。重いですよね?」
「いえ。ほの花さんはとても軽いですのでお気になさらず。」
そうは言っても重労働だ。
途中交代があるとは言え、刀鍛冶の里への道のりをひたすら人をおぶって走るなんて大変だ。
だからと言っていまさら減量などできやしないし、此処ぞとばかりに朝ごはんをたくさん食べてしまったことを若干後悔している。
しかし、呑気な私は途中で眠くなってしまってただ一人寝ながら刀鍛冶の里へ到着したと言う恥ずかしい失態をしてしまった。
いまから人を助けに行くというのに緊張感がなさすぎるし、お腹いっぱいで眠くなって寝てしまったなんて宇髄さんの継子としても如何なものなのか。
到着した時の私の絶望ときたら…
この場にいない宇髄さんにひたすら謝る羽目になったのだった。