第26章 君の居ない時間※
ほの花の体が痙攣して激しく仰反るのを確認すると漸く首筋から唇を離した。
そこに咲いていたのは赤黒く内出血をした所有印。普通の痕であれば一週間もしない内に薄くなってしまう。
これもそう長くは持たないとは思う。
それでもどうしてもほの花に自分の物だと分かる痕を残しておきたかった。
帰ってくるまで残っているほどの強く吸い付いた痕を。
何度も何度も吸い付いたそこはまるで怪我をしたかのように赤黒くなってしまっていて痛々しささえある。
「…、天元…?」
果てたばかりのほの花が虚な顔をして見上げてくるので口角を上げるとそのまま口づけをした。
「ん、…、満足した。ごめんな、首痛かったか?」
「痛くは、ないよ?蕩けちゃいそうだった…。」
「それなら…今からどろどろに蕩けさせてやるよ。俺のことしか分からないくらいに。」
そうすると、モスリンの中に入れていた手を抜き、それを下からたくし上げた。
美しい白い乳房が揺れて目の前に露わになるとすぐにそこにしゃぶりついた。
「…あ、んっ!あああっ!ふ、ぁぁ…!」
ほの花は雪のように白い肌だ。
所有印を残せばかなり目立つ。
現に首筋につけた痕はふと視線を向けるだけで視界に入ってくるほどの主張している。
乳房にそこまでの物を残すつもりはないが、ペロリと舐め回すついでにいくつか吸い付いては甘噛みをしていく。
いつもはこんなに赤黒くなっていない白くて美しい乳房も今日は虫に刺されでもしたかのように赤い痕が点々と残っていく。
他の虫に刺されるようなヘマをほの花はしないと思うが、念には念を。
自分の下で霰もない姿で喘いでいるのは他でもない愛おしい恋人だと言うのにその姿が見られないと思うだけで余計な心配だけが頭を支配する。
無駄に美人で、無駄に女性らしい体つきで、無駄に可愛いらしい性格で、無駄に優しいほの花が他の男に無駄な愛嬌を振り撒く姿を考えただけでも腑が煮えくり返りそうだ。
そばにいるならば、なんてことない。
それなのにそばにいられないと分かってしまうと見えないところでのほの花が心配でたまらない。
俺は少しでも自分を安心させるために所有印を付け続けた。