第26章 君の居ない時間※
「ったくよォ?お前らこんな時にイチャイチャしてんなよなァ。」
「無一郎くんにも言ったけどあれのどこがイチャイチャなんですか?私、視線で殺されそうになりましたよ。はい、ちくんとしますよ。」
エタノールを塗ってすぐに注射を打つと不死川さんはまだ尚呆れたようにこちらを見ている。
「アイツの機嫌直せんのはお前だけだからよ。頼んだぜ?でも、刀鍛冶の里も頼むな。」
「…不安しかないですよ。15分待機してください。」
残りの柱の人はしのぶさんが予防接種をしてくれたようだったので私は器具を全て集めると、処方箋を書き始める。
刀鍛冶の里で流行している病。
聞くところによると人里離れた場所にあると言う。
それなのにそこで感染が広がったと言うことはこちらから持ち込まれた可能性がある。
それは市中感染かもしれないし、確かなことはわからない。
色々なところに移動する鬼殺隊だからこそ用心しなければ菌を町中にばら撒いている可能性も十分にあり得るからだ。
書き終えたそれを隣で様子を見守ってくれていたしのぶさんに渡した。
「…これは?」
「予防接種のワクチンの製造方法です。私が行っている間、全ての鬼殺隊士に予防接種をお願いします。」
「分かりました。しかし、これは薬事書には載っていなかったですね?」
「此れは神楽家門外不出のものです。その年によって微妙に調合を変える必要があるので薬辞書の中に記載ができないんです。今年はこれでお願いします。」
母に教えてもらったことが役に立つとはお前なかった一年前。
だけど、記憶力の良さだけはあってよかった。
文字で起こしてくれてあったものは全て覚えている。
母が生きた証は私が全て引き継いでいるから。
しのぶさんに予防接種を託すと急いでことの次第を見守ってくれている産屋敷様のもとへ向かった。
「産屋敷様、予防接種を全て終えました。今は重篤な副反応がないか待機してもらっています。」
「うん。ありがとう。ほの花。助かったよ。」
「とんでもありません。申し訳ありませんが里へ向かわなければいけないので今から薬を調合してもよろしいですか?」
しばらく留守にするのだ。
ありったけの薬を彼に渡していかなければならない。
本当ならば定期的に見たいところだが今回ばかりは致し方ない。