第26章 君の居ない時間※
「…ということは僕とほの花は罹らないということかな?確か、僕の家族も打っていたと思う。」
「はい。産屋敷様はご家族も含めて安全かと思いますが、予防だけはしっかりなさってください。罹らないわけではなく罹りにくいというだけです。免疫力、抵抗力が弱まっている人や高齢者などは重症化しやすいようです。あと、看護記録によると子どもは比較的軽症のようです。」
安心したのも束の間、先ずはこの鬼殺隊のまさに"柱"である九人に何かあっては困る。
続け様に彼らに向き合うと一人一人と目を合わせる。
「予防接種というのは今の段階でこの国では認められていない予防措置です。しかし、海外では割と一般的で私だけでなく私がいた里の全ての人間、そして産屋敷様も接種を受けていますので、安全性は保証します。何より柱の皆様におかれましては任務で多方面に移動をされる可能性がありますので一刻も早く打っていただくようお願い申し上げます。」
頭を下げてお願いをすれば、可愛らしい声がすぐに耳に響いた。
「ほの花さんの言う通りにしましょう。早くしなければ取り返しのつかないことになります。刀鍛冶の里へ早く救護に向かわなければ。」
「蟲柱様…!あの、それは駄目です。」
「え…?」
折角士気が上がって来たのを感じたのに物の一瞬で話の腰を折ってしまったことに罪悪感しかないが、事実は伝えなければならない。
「申し訳ありません。予防接種は僅かな病原菌を体に入れて抗体を作ることで効力を発揮します。要するに抗体が出来るまで時間がかかるのです。」
「…と言いますと、どれくらいですか?」
「人によりますが…、母が言うには一律に効果が出るのは二週間だと言われています。」
「二週間だって?!そんなに待ってたら刀鍛冶の里が全滅しちまうぜェ?!」
たまらず不死川さんが声を荒げるがそればかりは人体のことだ。私とてどうすることもできない。特効薬がない以上、頼りになるものはこれしかないのだから。