第4章 実力試験は実戦で
えーーーっと…。
誰だっけ。絶対見たことある。
どこで見たんだっけ?
あまりに凝視してしまったことでその人が若干狼狽えた表情をした。
それに気づくとやっと私がこの人を放置したままに見つめ続けていたことにハッとした。
「…すみません!ありがとうございます!どこかでお会いしたことあるかも…と思って凝視してしまいました。」
慌てて差し出された手を掴むと立たせてもらう。
やっぱり気のせいだったかもしれないし、他人の空似だったかも。
深々とお辞儀をして、散らばった荷物を拾おうとするとその人が先に拾ってそれを渡してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「…会ったことはある。宇髄のところの継子だろう?」
「え…?は、はい!そうです…!神楽ほの花と申します!」
それを知っていると言うことは鬼殺隊の人…?それも宇髄さんをそんな風に呼べるのは"柱"の人だ!
ということは…あの柱合会議の時にいた人だ。
「…冨岡義勇だ。」
「冨岡さんですね。覚えました!よろしくお願いします!」
柱合会議にいた人というところまではわかっていたが、名前はやはり聞いたことがなくて自己紹介はちゃんとしていなかったと思う。
名前を知らなかったことも咎められなかったので間違いないだろう。
「…怪我はしてないか?」
「はい!大丈夫です!すみません。受け身を取れずに…、情けないです…。」
「胡蝶のところから帰ってきたのか?」
「え?いえ。産屋敷様のお薬の調合に行っていました。」
「…そうか。」
何故しのぶさんの家からの帰りだと思ったのだろうか。しのぶさんと仲がいいから私が最終選別を受けることを知っていたのだろうか。それにしても宇髄さんを見慣れているせいか口数の少なさに話すタイミングが難しい。
何かまだ話があるようにも見えないが話を始めることも終えることもしない冨岡さんに暫く無言で時間だけが流れるという珍事が起きた。