第4章 実力試験は実戦で
最終選別まで数日となり、産屋敷様にお薬の処方をした後、今日は真っ直ぐ帰ろうと家路を急ぐ。
本当は甘味も食べたいところだけど、産屋敷様の状態が日に日に悪くなっていくのを受け止められなくて今日もあの力を使ってしまったため、疲労が残っている。
最終選別まで日にちもないので体調を整えなければ。
産屋敷様に最終選別を受けることにしたと伝えたところ「そう言うと思ってたよ。」と言われてしまったが、深くは聞かれなかった。こうなることを予見していたのだ。目はほとんど見えなくなってきていて、私の方を見てくれてはいたけど、きっと見えてはいないのだろう。
薬を処方しても無意味な気がしてならない私は度々宇髄さんとの約束を破ってしまっている。もちろん産屋敷様にバレそうな程は使っていない。ほんの少し、その時、その瞬間、気分が良くなれば良いなぁと言う私の身勝手な想い。
だから今も別に体調が悪いわけではないのだが、最終選別の前なので無理はできない。宇髄さんにもしのぶさんにも"まずは生きて帰ること"と言われている以上、油断は禁物。
実力的に私もカナヲちゃん(だいぶ仲良くなった)も問題なく合格するだろうと言われているが、命がかかることならば慎重にやらねばならないのだ。
宇髄さんに''死んだらぶっ殺す"と謎の脅し文句も言われているし、死ぬわけにはいかない。
大きな荷物を肩にかけて足早に町を抜けようと急いでいると、角を曲がろうとした私と同じく反対側から来た人と思いっきりぶつかってしまった。
いつもなら受け身が取れるのに少しばかりの疲労が残っていて尻餅をついてしまった。
最近の鍛錬で打たれ強くなっていたおかげで痛みなど気にならなかったが、私の方が吹っ飛んでしまったことでぶつかった相手の方が「すまない…!」と慌てたように手を出してくれていた。
その手の先をみると黒髪の青年。
どこかで見たことのあるような…。
記憶を呼び起こそうとして私は差し出された手をそのままにその人を凝視してしまっていた。