第25章 甘える勇気
「えっと、宇髄さんにも御礼…と思って浴衣を選んでたんです。」
何だか自分勝手な心模様のせいで少し言いにくかったが、三人ともニコニコと笑顔のままそれぞれ感嘆詞を述べてくれているのでホッとした。
どうやら嫌な想いはしていないようだ。
「わぁーっ!天元様喜びますよぉー!!」
「ええ、絶対喜びますね!だってほの花さんが選んだんですもの!」
「ほの花さんの作った料理食べるだけでも幸せそうな顔してますもんね!」
「あはは…、そ、そうだと嬉しいです。けど、私…選ぶのが苦手で…。気に入ってくれるといいなぁ…。あ!あと、このことはまだ内密にしてくれますか?」
そうやって聞けば三人とも「勿論です!」と了承してくれた。
驚かせたい…というよりも伝えたことで期待値が上がってしまうのを避けたいのだ。
普段選ばないような柄を選んでしまったからこそ余計に…。
だったら宇髄さんの好きそうな柄を選べばよかったではないか。
いや…でも、それだと贈り物をした意味が…。
宇髄さんの着物の中で私が贈ったものだけ逆に目立つと嬉しいな…なんて思ったから。
そうすれば、いつもそれを見る度に宇髄さんに思い出してもらえる気がした。
随分重い女だと思われるかもしれないが、本当ならば私はいつだって宇髄さんの頭の中に存在していたい。
でも、仕事だってあるし、四六時中なんて無理に決まってる。
だからこうやってふとした時に私を思い出して貰えたら嬉しいなと思ったから。
「さ、甘味選びましょう?宇髄さんのおごりです!ふふ。」
「「「はーい!」」」
三人の奥様達はそれぞれがとても魅力的で可愛い人達。
後からしゃしゃり出てきた私にもとても優しくしてくれるし、いつだって親身になってくれる。
元夫を奪ったようなものなのにこんなに穏やかに過ごせるなんて彼女達の性格の良さのおかげだ。
だからこそ私は出来る限りのことを彼女達に尽くしたいと思っているし、万が一彼女達の誰か一人でも元に戻りたいと思うのであれば了承してしまうかもしれない。
そんなこと言ったらまた宇髄さんに怒られてしまうから言わないけど、心の中ではずっとこの気持ちを持ち続けながら生きていくのだと思う。