第4章 実力試験は実戦で
「…さ、最初は…宇髄さんと、連絡…取れるのいいな、って。お館様に頼めばくれたかもしれないですが、そんな狡いこと、したくなくて…。」
「…はぁ?俺と連絡取れるって…、毎日一緒にいるだろうが。」
「そ、そうなんですけど…、急に誰かとお茶したりすることになった時に心配させる前に言えるといいな、とか。」
しどろもどろになりながら話すほの花の言葉を一語一語聞いているが、俺はすげぇ動揺している。
鎹鴉が欲しかった理由が"俺と連絡取りたい"だなんてクソ可愛い理由だったからだ。
本来ならばそんなくだらない理由で命賭ける試験受けんなというところだろう。
そう言わなきゃならねぇ。コイツは俺の継子だろうが。
師匠としてそう指南してやる必要がある。
それなのににやけた顔を手で隠すので必死だ。
「…その理由で、最終選別を受けようと思ったって言うんなら頂けねぇなぁ?ほの花ちゃん。」
「ごめんなさい…。」
「だけど、受けるって決まっちまった以上仕方ねぇ。欲しいもんがあるなら俺に言え。鎹鴉は別だが、必要なら買ってやるし、相談にも乗ってやれるだろうが。」
「で、でも!それだけが理由じゃ…!」
「わぁーってるって。」
ほの花の必死の弁解は受け入れなかった。これ以上顔を見られたくなくて思わず抱きしめていたから。
やってしまった時から後悔したが衝動が止められなかった。
「…う、宇髄さん?」
「お前は大事な、…継子だ。」
「あ、…ありがとうございます。」
「お前の気持ちはわかったから。ちゃんと此処で待っててやるからきっちり合格して帰ってこいよ。」
"激励の抱擁"だと後付けで言ってしまえばいい。
頭の中で俺は狡いことばかりを考えている。
こんなことをするのは師匠として正しくない。
行為は激励だと思えば許されても、気持ちが全く相応しくない。
それでも、俺は暫く離すことができなかった。全然身動きしないほの花が強く抱き締めすぎたせいで酸欠でぐったりしてきたことで、慌てて離したがそうでなければナニをしようとしていたか…
考えたくもねぇ。