第25章 甘える勇気
「「「ほの花さん、ありがとうございました!!!」」」
「いえいえ、そんな。私の方こそいつもありがとうございます。」
呉服屋さんを出ると深々と三人に頭を下げられてしまい、慌ててこちらも同じように下げる。
いつも助けてくれているのだからそんなことは当たり前だ。
お礼が遅過ぎたくらい。
「ほの花さんに気を遣わせてしまって申し訳なかったですね…。でも、嬉しかったです。ありがとうございます。」
「いえいえ、雛鶴さんの生地、すごく似合ってましたよ!!みんなで花火大会にってやつに行きましょう!!」
「え…?」
しかし、私の発言に急に眉間に皺を寄せて、困ったような顔をする雛鶴さんに首を傾げた。
何かまずいことを言っただろうか?と必死に自分の発言を省みるが、失礼な事を言った記憶はない。
それなのに三人で顔を見合わせて、クスクスと笑い出した雛鶴さんに益々理由がわからずポカンとしてしまった。
「天元様はほの花さんと二人で行きたいんじゃないですか?」
「え?いや、そんなことないと思います!昨日だって須磨さんに浴衣のこと言われた時、一緒に行くのはいいって言ってましたよ?」
「そんなの咄嗟に出ただけですよ。ふふ。私たちは正宗様達と行くのでほの花さんは天元様と二人で行ってきていいですからね。きっとその方が天元様は喜びます。」
気を遣われてしまったのだろうか。
そうやって笑う雛鶴さんだけど、せっかくだし、生まれて初めての花火大会なのだからみんなで行けばいい。
その方がきっと楽しいに決まってる。
「でも…私は雛鶴さんとまきをさんと須磨さんとも行きたいので…一緒に行きませんか?」
「もう…ほの花さんったら…。ふふ。わかりました。機嫌が悪くなってもその後のことはほの花さんにお任せしますからね。」
そもそも私のことを好きでいてくれる宇髄さんだけども、彼女達だって我慢してるのかも…。本当は宇髄さんとも行きたいかもしれないし。
独り占めは良くない。
少し前の私なら彼を独り占めしたくて仕方なかったのに、いまはそれが申し訳なく感じる。
だから考えないようにしようと決めていたのに、無意識に宇髄さんと元奥様達の仲を取り持つような行動をしてしまっていたのかもしれない。