第25章 甘える勇気
「ほの花さーん!!決めましたぁ!!」
「あ、はーい!女将さん。彼女達の採寸をお願いしてもいいですか?」
女将さんの話を聞いていると須磨さんが手を振りながらぴょんぴょんと飛び跳ねているので、すぐに女将さんに声をかける。
「はい。かしこまりました。」
巻尺を片手に彼女達のところへ向かうと一人ずつ採寸をしてくれている。
どんな生地を選んだのだろう?と気になって近づいてみると三人とも自分の似合うものが分かっているのか素敵な色合いのものばかりで顔を綻ばせる。
「わぁ…、素敵な生地〜。」
「ほの花さんはどんな生地を選んだんですか?」
まきをさんが興味津々と言ったように聞いてくれるので、思わず苦笑いを向ける。
"選んだ"のは自分じゃないからだ。
まさか自分で自分のものも選べないなんて恥ずかしいということは分かっているが、この性格はなかなか変えられない。
「あー…えっと、濃紺に白い百合があしらってる物なんですけど…、自分じゃ選べなくて選んでもらったんです。お恥ずかしい限りです…。」
「あー!天元様が選んだんですね?」
「そういうことです…。」
「全然恥ずかしくないですよー!好きな人に選んでもらうって言うのも良いですよね。」
そうやってあっけらかんと笑ってくれるまきをさんだけど、本当ならば宇髄さんに選んで欲しかったのだろうか?と余計なことを考えてしまって目を彷徨わせた。
また悪い癖だ。
そんなこと誰も言っていないし、まきをさんも一般論を言ったまでのこと。
それなのに勝手に自責の念に駆られて、悪い方向に考えてしまうのは私の癖。
いい加減やめよう。
空気を悪くするのだけは嫌だったので、必死に笑顔を作り直すと、雛鶴さんと須磨さんが選んだ生地も見せてもらった。
皆それぞれ素敵な生地にそれに合わせた帯も自分で選ぶ。
こうやって選ばれた生地はその人に着てもらえて、生地として一生、その人を包み込むことだろう。
しかし、選ばれなかった生地は別の誰かのもとに行く。
選ばれなければいくらその人を想っても無意味になる。
選んだ側も選ばれた側も悪気はない。
人生とはそう言うものだ。
納得できてないのはわたしだけ。