第25章 甘える勇気
「…うーん…、迷いますねぇ…。どれも捨て難い…。」
「柄だけだと宇髄様は麻の葉繋ぎが華やかでお好きそうですね。」
「そうですよね…。」
やっぱり麻の葉繋ぎは宇髄さんが"自分で選びそう"な柄。
柄自体が派手なのだから、色味を明るい物にしたらもっとド派手で気にいる浴衣になるだろう。
でも、せっかく…顔がいいのに勿体ないと感じるのは私だけだろうか?
宇髄さんは本当に美丈夫だから、彼の顔を生かすためには浴衣は少し大人しめな感じのがいい気がする。
余計、彼の顔が引き立って素敵に見える事間違いなしの筈だ。
「…縦縞しじらにしようかなぁ…。」
「あら、意外でしたわ。でも、これも素敵ですよね。」
「麻の葉繋ぎも紗綾形も迷いましたが…、折角顔がいいのだからそれを生かす邪魔をしない柄のがいいかな、と思いまして…。どう思いますか?」
初めて男性に贈り物を選ぶのだから、私的は思い出に残るような物を贈りたい。
宇髄さんが自分で選びそうなものを選んでもそれはそれで良いけど…、私が"選んだ"ということを喜んでくれるなら普段は選ばなさそうな物にしてご尊顔を引き立たせると言うのも良いかもしれない。
「それは素敵だと思います。宇髄様なら絶対こちらを選ばれると思ってましたが、ほの花さんが選んだ物ならば喜ぶに決まっていますし、此れに少しだけ華やかな帯にしたら良い塩梅かもしれません。」
「あ!良いですね!帯は少し派手目にしたら宇髄さんっぽいかもです!」
「では、帯をお持ちしますのでお待ちください。」
女将さんの後ろ姿を見送ると縦縞しじらの生地を見つめる。
喜んでくれるだろうか?
好きな人に贈り物をするのってこんなにドキドキと胸躍るものなのか。
宇髄さんも私に買ってくれる時、こんな風に考えてくれているのかな?
それを考えると嬉しくてたまらない。
もっと早く贈り物を返せばよかった。
そこまで気が回らなくて、いつも宇髄さんにしてもらうばかりだった。
花飾りも
耳飾りも
膝掛けも
浴衣も
彼にもらった物はどれもとても大切だ。
それは今日、もっと尊いものだと感じられた。
こんな風に私のことを考えながら選んでくれたかと思うと、益々大切にしたい品物だと思わされた。