第25章 甘える勇気
「あら、ほの花さん?こんにちは。」
宇髄さんと昨日来たばかりだと言うのに再び訪れた私を不思議そうに見る店主の御夫婦に頭を下げる。
「こ、こんにちは。」
「「「こんにちは〜。」」」
しかも、今日は後ろに美女三人を引き連れて来たとなれば、何故?と思うのも肯ける。
三人は一度来たことがあると宇髄さんが以前言ってたので、特に驚きもなく此処まできた。
「あら、お嬢さん達も以前来て下さったことありますよね?ほの花さんのご友人だったんですね。」
「あ、は、はい。今日は彼女達にいつもお世話になってるので私から浴衣を贈らせてもらおうと思って伺いました。」
「まぁ!それはそれはありがとうございます。どうぞ、お上がりください。」
ご友人…と言う関係性があまりしっくり来ない。
恋人の元奥様達は"友人"でいいのだろうか?
友人なんて呼んでしまうのも烏滸がましい気もする。
幸せを奪ってしまった私にこんなにも優しくしてくれる彼女達は神様としか言いようがない。
わいわいと言いながら小上がりをのぼり、奥の部屋に案内される三人の少し後ろをついていく。
こんな風に四人でお出かけすることは殆どないので新鮮な気持ちだ。
帰りに甘味を食べられるように宇髄さんがお金を余分にくれたし、女子同士のお出かけもたまには良いかもしれない。
通された部屋はこの前と同じ部屋。
色とりどりの美しい生地が並べられていて、三人が楽しそうにそれを見ている。
(…ああやって楽しそうに選べるのいいなぁ。)
ふとそんな感想が頭に浮かんでしまったのは、宇髄さんに自分で選んだ何かを贈り物としてあげなければいけないことになってしまったから。
自分の物ですら何を選べばいいのか分からないのに、どうしたらいいのだろうか。
「今日は宇髄様は一緒ではないんですね?」
ボーッと三人の楽しそうな姿を見ながら、邪魔にならないところで正座して待っていると女将さんがそう話しかけてくれた。
声をかけられてハッとした。
そう言えば宇髄さんは此処の常連だと言う。
ひょっとしたら好みとか分かるかもしれない。
私は藁にもすがるつもりで女将さんの腕を掴んだ。