第25章 甘える勇気
ほの花と仲直りしてから、気になっていたことを聞いてみることにした。
「いつ行くか決まったのか?呉服屋。」
「うん!今日のお昼に行ってくるよ!」
「そうか。仕立てるのに時間かかると思うから、早い方がいいだろうな。でも、本当にいいのか?俺が金出すぜ?」
「それじゃ意味ないじゃーん!じゃあ、帰りに甘味食べるからその分のだけください。みんなで食べて帰ってきていい?」
最初は須磨が俺にタカってきたのだから俺が出すべきだろう。
でも、頑なに断られると思ったのに、意外にも甘味ならば可愛くおねだりしてくれるので頭を撫でてやり、了承した。
コイツのために甘味処でも開けば、喜んでくれるのだろうか?とすら思えてくるほど甘味馬鹿のほの花。
「ああ、鱈腹食ってこい。俺は任務でいねぇかもしれねぇからアイツらのこと頼むな。」
「うん!大丈夫だよ〜!」
たまには女同士で遊びに行くのもいいだろう。
ほの花はそう言う経験すらあまり無いようだから良い機会でもある。
「ねぇ、そういえばさ。私のことを物欲がないっていうじゃん。でも、天元こそ何か欲しいものないの?」
「だからほの花だって。」
「そんな答えが許されるなら私だって"天元"って答えるんですけどー。浴衣の御礼に私も何かあげたいのにー。」
不満そうにそう言われてしまうが、確かにほの花の意見も最もだと思い直す。
ただでさえ義理堅い女なのだからそう聞いてくるのも肯ける。
しかし、特別欲しいものもなかったのでパッと思いついたことを言ってみた。
「じゃあ、ほの花が選んでくれよ。お前がくれるもんなら何でも嬉しいぜ?でも、選ぶの苦手だもんな〜?せいぜい頑張れよ。」
「…な?!わ、私のこと試してる?!」
「試すわけねぇだろ。お前が選んだモンが欲しいんだよ。別にすぐじゃなくていいし、ゆっくり考えて貰えるの楽しみにしてっからな。」
自分の浴衣ですら何が似合うのか分からずに途方に暮れるほの花。だから彼女が俺のために何かを選んでくれると言うのならばちょっとした事件だ。苦手なことを望むなんて酷い男かもしれない。
それでもその時だけは俺のことで頭がいっぱいになる筈。
そんな時間で頭の中を埋め尽くされればいい。
俺のことしか考えるな。
そうしたら余計なことは考えないだろ。