第25章 甘える勇気
朝からクソ可愛い顔で覗き込まれてしまえば、少しくらい意地悪したくなるのも致し方ないと思う。
昨夜の苛々も腕の中にほの花がいれば少しは落ち着いて、冗談を言えるくらいには回復していて、ついやり過ぎた。
「…で?朝っぱらから喧嘩してた理由は何ですか?」
「宇髄さんが意地悪してきたんですーー!」
「テメっ!!此処ぞとばかりに!豆大福買ってやるっていっただろ?」
「でも、30個しか買ってくれないって言った!」
「ケチで言ってんじゃねぇよ!食い過ぎだろっつってんの!!」
しかし、雛鶴と正宗が二人して何事かと入ってきても尚、腹の虫が治らないほの花が雛鶴に泣きついたものだから、二人の前で再び喧嘩が始まろうと言う時に雛鶴と正宗の雷が落ちた。
「天元様!朝っぱらからほの花さんをいじめないでください!可哀想に。」
「ほの花様も!いい大人が豆大福の個数くらいで何を喚き散らしてるんですか!恥ずかしいですよ!!」
「「…………。ごめんなさい。」」
「もう、本当に。何事かと思いきや…謝るならお二人で謝り合って仲直りしてください。雛鶴さん、行きましょう。どうせ痴話喧嘩だと思いましたが…。お二人とも朝餉までには仲直りして来てくださいね。大人なんですから。」
正宗の辛辣な発言に俺もほの花も呆気に取られて何も言い返せない。
確かに今回は朝から大人げない喧嘩をしちまったのは当たってる。
…というか、ほの花よりも正宗たちの方が俺にも遠慮がない。コイツも早くそうなればいいのに。
二人の後ろ姿を見送り、襖が閉まったのを確認するとほの花をチラッと見る。
口を尖らせてしょぼんとしている姿すら可愛いと思ってしまい、頭をポンと撫でた。
「悪ぃ。やり過ぎたな。」
「私も…ごめんね。豆大福、30個でいいよ。」
「30個を二回買ってやる。今日明日で。」
「うん!ありがとう!」
腰を引き寄せれば素直にくっついてくるのでそのまま口づけをした。
触れ合えば
愛を確かめ合えば
必ず分かり合える。
何度喧嘩してもほの花となら乗り越えられる。
それほど特別な存在なのだから。