第25章 甘える勇気
翌日、朝起きるといつも通りに宇髄さんの腕の中で目を覚ました。
いつもと同じ時間
いつもと同じ場所
いつもと同じ人と条件は同じなのに私はいま切実な問題に直面している。
「…んぬぬっ…!と、とれない…!」
深く寝入っているのか私のことを全く離してくれないので起きてから小一時間。
此処から抜け出すために試行錯誤を繰り返している。
そうこうしている内に起きても良いものを、今日の宇髄さんはちっとも起きてくれない。
熱でもあるのかと思って、額に触れてみたり a したが、全然そんなことはなく…。
ただ寝ているだけ。
鍛錬をする前に薬の調合でもしようかなと思っただけなので焦って起きなければいけない理由はないが、''起きない"のと"起きれない"ではわけがちがう。
眉をハの字に曲げて、口を尖らせてもう一度宇髄さんを見上げてみると、こちらを見下ろしている瞳と合致した。
「…え?!あ、お、おはよ!」
「ククッ…、随分、難儀してたなぁ?ほの花?」
「なっ…!!ま、まさか…起きてた?!」
「んー?途中からな。一時間くらい前。」
「ほぼ最初からじゃない!!!もうーーー!!」
確かにそうだ。あれだけ腕の中で動いているのに宇髄さんが起きないなんてことはない。
だからこそ熱があるかと思ったんだけど、熱があったとしても起きるだろう。
「だってよ、一生懸命で可愛いのなんのって…。頑張って腕外そうとしてさ。」
「もー!恥ずかしいじゃん!」
「『え…!まさか熱でもあるのかな…?』とか言っちゃってよ。可愛い顔を近づけてくるから口付けてやろうかと思ったんだけど我慢したんだぜ?すげぇだろ?」
何がすげぇだろ?なのだ。
こちらはずっと重い腕に悪戦苦闘していたというのに。
力が抜けているとこんなにも重いのか、この筋肉隆々の腕は…!!と。それなのに薄目で見て笑ってたなんて!!
「全然すげくなーい!!天元のばかぁーーー!!めちゃくちゃ心配したし、重い腕に格闘したんだからね?!」
「悪かったって〜。豆大福買ってやるからよ。」
「50個ね!!」
「食い過ぎだろ!!せめて30個にしろ!」
「やだ!!なんなら60個にして!!」
「お前、そんなもんねだる時だけ素直になってんじゃねぇよ!!」
そんな私たちの口論の声にバタバタと廊下が騒がしくなってきたが、絶対に私は悪くない。