第25章 甘える勇気
おにぎりを頬張りながら、何故かじーっと私を見てくる宇髄さんに視線を彷徨わせる。
いくら婚約者と言えど、こうも見つめられたら照れると言うものだ。
「…あ、あの、な、何?穴が開きそうだよ。」
「気にすんなって。お前の顔が見てぇだけ。」
いや、気にするーーー!!
寝起きなのに美丈夫極まりない宇髄さんに見つめられて心臓がバクバクうるさいと言うのに。
「ったく、これくらいで心臓の音うるせぇな、ほの花。」
「ってぇええ!そうだったぁ…!き、聞かないでよぉ!恥ずかしいぃっ!」
「見られて恥ずかしいっつーのは分かるけど、化粧してないほの花の顔も好きなんだよなぁ。なんかつるんとしてゆで卵みてぇだし。」
「な、な、なに?!何なの?!ゆ、ゆでたまご作ってこようか?!」
揶揄うわけでもない。
真面目な顔をしてそんなことを言う宇髄さんに私の心臓は益々煩い。
心拍数が爆上がりしているのは簡単に分かるし、彼に見つめられるだけで変な気分になってしまう。
「ゆで卵はいらねぇけど、ほの花が欲しい。ちゃんと俺の嫁になるってここで誓え。」
「へ…?ど、どうしたの?急に。」
「寝起きのほの花も見てぇし、寝る前のゆで卵みたいなほの花も見てぇ。これからもずっと。だから俺の嫁になるって言えよ。ほの花。」
そんなことを真剣な顔をして言われてしまえば、嬉しいしドキドキが止まらない。
私が関係性がこのままでも良いと言ったから、気にしてくれてるのだとすぐに分かった。
私だけのことではない。
彼が望んでくれてることなのに本人に言うべきことではなかった。
「天元の、お嫁さんになる。」
「…もう一回。」
「天元のお嫁さんになりたい。」
「……ほの花。もう一回。」
「……天元、お嫁さんにしてね?」
「当たり前だろ。」
今世じゃなくてもいいから。
いつかお嫁さんにしてね。
このままでも良いと思ってしまったのも嘘ではない。だけど彼が望んでくれるならそうしよう。
宇髄さんが望まなくなるまで。
いつの間にか空になったお皿を床に置くと、彼に手を引かれて荒々しく口づけられ、布団に押し倒された。
それを拒むことはしない。
だって私は彼を愛している。
これからも一生、彼だけを愛し続けると決めているから。