第25章 甘える勇気
「あ、天元。起きた?おはよう〜!」
目が覚めるとほの花の声が聴こえて来て、そちらを見遣ればにこやかな表情で茶を淹れている彼女がいた。
外を見るともうどっぷりと日も暮れて、何なら夜だ。
「あー、寝過ぎた…。」
「虹丸くんが今日は任務ないって言ってたよ。ごはんはどうする?おにぎりと軽めのおかずだけ作ってあるけど…。」
そう言うほの花の目の前には確かに大きめのおにぎりが二つとだし巻き卵に煮物、鯖の切り身が乗った皿が置いてあった。
「あー、食べる食べる。腹減った。」
「足りるかなぁ?足りなかったら私の隠しおやつの羊羹あげるよ。」
「…隠しおやつ暴露してどうすんだよ。いらねぇよ。隠してんなら隠したままにしとけ。」
「そう?」と笑いながら渡された薬膳茶を受け取ると一口飲む。
薬膳茶と一口に言ってもほの花が淹れてくれるこれは毎回味が違う。
今日のは少し甘い気がした。
恐らく体調やらを見て微妙に茶葉の配合を変えているんだと思うけど、意外に楽しみだったりもする。
「じゃあ、はい。少しだけど夜食にどうぞ。もう夜11半時だから食べ過ぎも良くないしね。」
「あー、やっぱ寝過ぎたな。損した気分だぜ。」
「ゆっくり寝れたなら良かったんじゃない?」
「まぁな。お前は何で夜更かししてんだよ。」
11時半ならまだ起きてる可能性はあるが、この時間に起きてることがあるのはほの花か俺くらい。
あの六人は朝早くから家のことをやってくれているので11時までには寝てしまう。
「ちょっと薬作ってたら遅くなっちゃってね。それでついでに天元の夜食作って、今持って来たところ。これ置いたら寝るつもりだったよ。」
「そうか。ありがとな?なら此処で寝ろよ。一緒に寝ようぜ。」
「えー?天元、もう寝れないんじゃない?寝過ぎて。」
「食ったら風呂入ってくるからそしたらまた眠くなるかもしれねぇだろ?」
俺はほの花が作ってくれた夜食を目の前にして手を合わせると、食べ始める。
目の前にニコニコしているほの花がいて、ほの花の手料理を食べて、共に寝れるなんてことが幸せだと心底感じる。
やはりほの花にはずっとそばにいて欲しい。
妻になって欲しい。
この笑顔を死ぬまで見ていたい。