第25章 甘える勇気
布団に入って数分後にすぐに寝息が聞こえてきた彼を見て、よっぽど疲れていたのだと申し訳ない気分になった。
私としたことが自分のことで頭がいっぱいで彼を思いやる余裕がなかった。
抱き締めてくれている手を一本ずつ剥がすとコッソリと布団を抜け出し、自分の部屋へ向かう。
今日は流石に任務はないだろうけど、柱である彼が急な任務を言い渡されるのも珍しくない。
少しでも疲れが取れるように薬膳茶の準備をしていると「ほの花さーん!」と言う可愛い声が襖の向こうから聴こえてきた。
「はーい!どうぞー!」
襖を開けて顔を覗かせたのは可愛い三人組。
思わずにやけてしまう私は男性の気持ちがものすごく分かる。
宇髄さんだってこの三人を見て、にやけていたに違いない。
それに関しては嫉妬よりも納得だ。
「ほの花さん!須磨から聞いたんですけど…、本当に良いんですか?」
「須磨が無茶言ったんじゃないんですか?」
「えー!酷いぃ!まきをさん!私、ほの花さんにタカってないですよぉーー!」
来た早々、いつものようにまきをさんと須磨さんが喧嘩のようになってしまったので、慌てて窘める。
「須磨さんにタカられてなんていませんよ?私がいつも家事を一任してしまってる御礼をしたかっただけなんです。」
「御礼って…、私たち別に何もしてないですよ?それにほの花さんはお仕事があるわけですし。」
「そうそう!ほの花さんは鬼殺隊の仕事があるんだから家のことまでやる必要ないですから!」
「天元様がもそれを望んでますし!無理するとまた倒れちゃいますよ〜?」
一様に私を労ってくれるけど、今日労いたいのは私ではなくこの三人。
家事は仕事と違って一年通して毎日ある。
分担してやってるのは知っていても、体調が悪ければ休める仕事と違い、家事ほど大変な仕事はないと思っている。
「ふふ、そうですね。だから皆さんに感謝してるんです。これからもよろしくお願いしますの意味も込めて贈らせて下さい。ね?いつ買いに行きましょう?」
そう私に押し切られると、三人で顔を見合わせてコクンと頷き、日程の相談をし出した。
彼女達には幸せになって欲しい。
私よりもずっとずっと幸せになって欲しい。
人の幸せを奪った私なんかよりずっと幸せになる権利があるのだから。