第25章 甘える勇気
「ほの花さーん!天元様!お帰りなさい〜!!」
「おー。ただいま。」
「須磨さん!ただいまー!」
屋敷に帰ると須磨さんに出迎えられた。
ふわふわしていて、可愛らしい須磨さんが私の腕に巻きつくと、宇髄さんの手の中にある物に目を向ける。
「天元様とお買い物行ってたんですか?」
「あ、そうなんです。」
「ほの花に浴衣買ってやったんだわ。再来月花火大会あるだろ?」
「ええええ!!私も浴衣欲しいです!買ってください!!」
すると、須磨さんが宇髄さんに向かってそう言って期待の眼差しを向ける。
こう言うところ、本当に可愛いと思う。私もこれくらい素直におねだりができたら宇髄さんも可愛いと思ってくれるんだろうなぁ。
欲しいものが無いのが難点だけど。
「はぁ?お前は去年も買ってやったじゃねぇかよ!」
「それはそれです!!新しい浴衣でみんなで花火大会行きましょうよー!」
「みんなで行くのは良いけど、便乗すんなっつーの!コイツは男にもらった浴衣着ようとしてクソ苛ついたから買ってやる必要があったんだわ!」
「えええー!ほの花さんー!天元様がケチですーー!」
まるで父と娘の攻防を見ているような感覚に陥ったが、あまりにも浴衣が欲しいと言う須磨さんが可愛くて顔が緩んでしまう。
「須磨さん、宇髄さんは全然ケチじゃ無いけど、浴衣は私が買ってあげますよ。もちろん、雛鶴さんとまきをさんのも。いつものお礼です。今度一緒に買いにいきましょ?」
「は?」
「えー??良いんですか?!」
「はい!勿論です!みんなで新しい浴衣着て行きましょう!いつ買いに行きましょうか?」
「あ!雛鶴さんとまきをさんに聞いてきます!!あとで部屋に行きますね〜!」
嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶと雛鶴さんとまきをさんのところに駆けて行った須磨さんを見送ると隣にいた宇髄さんが私を怖い顔で見下ろしていてビクッとしてしまった。
「え?!な、なんで…お、怒ってる?」
「お前が買ってやる必要あるか?」
「あるよ〜!だっていつも家事はやってもらっちゃってるし、いつか御礼を…ってずっと思ってたんだもん!もちろん、天元にも感謝してるけどね?」
やっぱり今日の宇髄さんは何だか変だ。
納得いってなさそうな顔がそれを物語っている。