第25章 甘える勇気
「…あー、マジで可愛かった…」
「も、もう…!何回言うの!恥ずかしいじゃん!」
呉服屋さんを出てからと言うもの宇髄さんが仕切りにこうやって褒め称えるので私はどうしたらいいのかわからず困っている。
「何が恥ずかしいんだ!恥ずかしいことなんか何もねぇ!」
「似合ってたってことなら…天元が選んでくれたからだよ。ありがとうね?」
すると、急に押し黙ってしまい、じーっと見つめられる。褒め称えたり、押し黙ったり…今日の宇髄さんはどうしたのだ。
「そういや…お前、俺の女になってから益々可愛くなったもんな…。」
今度は遠くを見て黄昏れるようにそんなことを言うので益々よく分からなくなる。
でも、そうやって褒めてくれるのは恥ずかしいけど嬉しいという気持ちも大きい。
だから…ちゃんと私も感謝の気持ちを伝えないと。
「もし、本当にそうだとしたら…天元のおかげだね?」
「俺?何で?」
「だって天元がいつも愛してくれるから…。だからそう見えるんだと思う。ありがとね?」
そうだ。
綺麗になったと言ってくれるならば、それは宇髄さんのおかげ。
事あるごとに「可愛い」だの「綺麗」だの。あらゆる褒め言葉を毎日言われていれば、自然とそうなるのでは無いか。
花だって毎日褒めれば美しく咲くというくらいなのだ。
私は意志を持った人間なのだから、好きな人に賛辞を受ければ嬉しくて天にも昇る気持ちになるのは仕方ないことだと思う。
「なるほどねぇ…。じゃあ、あの男みてぇにほの花に想いを寄せる男がいてもおかしくねぇか…。」
「…えー?」
「だって毎日俺が愛でて、褒めまくってんだからよ。」
あの人がそれで想いを寄せてくれたのかは分からない。
でも、一度だけぶつかった時、私の頭の中は宇髄さんでいっぱいだったと思う。
遠くの任務で丸一日会えていなかった私は早く会いたくて走ってしまったんだ。
顔はニヤケきっていたし、宇髄さんを思い浮かべるだけで勝手に笑えてしまう。
そんな私をはたから見たら、自分に笑いかけてくれてると思うかもしれない。
納得はできてはいないが、恋をすると綺麗になるとはよく言うものだ。
彼の存在のおかげで少しはマシに見えていることがとても嬉しかった。