第25章 甘える勇気
「…あのね、天元。怒るかもしれないけど…。」
「怒るようなこと言うなら聞きたくねぇな。」
彼が私を自分の妻だと言ってくれたことは確かに驚いたが物凄く嬉しかったのも事実。
いずれそうなるのだと言うのもちゃんと有難いと思って受け入れている。
だけど、どうしても自分の存在が宇髄さんと元奥様達の関係性を壊してしまったことの自責の念が完全に消え去ることはなかった。
どこか彼の"奥様"と言う立場はあの三人だというのが頭から消えないけど、それで良いと思っている自分もいるのだ。
そこまで"望めない"と脳が勝手に思い込んでいるようにしっくり来ない。
あまりに愛してもらって、怖いんだ。
これ以上望むことが。
「…今のままでも私は十分幸せだからね。」
「ほの花。」
「天元がいてくれるなら…別にそこまで…」
「ほの花。欲がねぇにも程があるぞ。俺の気持ちまで無視すんな。俺はお前を妻にするって決めてる。」
安心させようとそう言ってくれる宇髄さんに笑顔を向ければ背中を撫でてくれた。
もちろんそうなりたいと思う。
でも、私の気持ちが付いてきていない。好き過ぎてこれ以上必要不可欠になることに恐怖心があった。
あの三人から彼を奪ったようなものなのに、そんな覚悟もできていない自分が情けなくて、逃げ腰になっている。
だけど、別れたくはない。
だったらこの関係性のままでいいと思ってしまっている自分はとんでもなく臆病者だ。
「…ありがと。うん…。そうだよね。」
「ったく、くだらねぇこと言うな。アイツらとは話がついてることだし、何ヶ月経ってると思ってんだ。今更の話だぞ?蒸し返してどうすんだよ。」
「ごめん、そうだよね。幸せ過ぎて不安になっちゃった。」
「お前は俺に守られてりゃァいいんだ。そばにいろ。いいな。また勝手にいなくなったら許さねぇからな?」
繋がれた手は温かくて大きい。
この手の温もりは離したく無い。
離れる気持ちも全くない。
だけど、幸せは時に人を不安にさせる。
幸せ過ぎて怖い。
幸せ過ぎて未来を想像すると、今ある幸せが全部夢なのではないかと思うほど。
私は彼の手を強く、強く握りしめた。
離さないでと言うかのように。