第25章 甘える勇気
ほの花と鰻を堪能した後、再び手を引いて目的地に向かうため歩みを進める。
隣では「御礼の意味…」とブツブツと文句を言っている俺の女。
コイツは何だ。遠慮の塊が人間になったのか?
御礼とか言って鰻を奢らせろと言ってきたのだが、そんなことさせるわけがない。
俺はケチ臭いのが派手に嫌いだし、女に奢られるのも好きじゃない。
それも自分の女だぞ?ンな恥ずいことできっかよ。
「…俺は一生お前に金は出させないからな。」
「えー?!何それー?ずるーい!」
「ずるいって何だ!男がそんな小っ恥ずかしいことできっかよ!」
「"俺とお前は平等だ"って前に言ってたじゃん!全然平等じゃないよ?!」
「それとこれとは別の話だわ。」
ほの花は不満そうに見上げてくるが、ただ可愛さ自慢しているようにしか見えない。
そんな上目遣いしてどうするつもりなのだ。
こんなところで勃起させるわけにもいかないので、頭をぐしゃぐしゃと撫でると真っ直ぐ前を見据える。
「ねぇー、天元ー!聞いてるー?じゃあ甘味食べたいから行こー?」
「行ってもいいけど、俺は自分の女に金は出させねぇぜ?」
「チッ…。」
「舌打ちすんな!」
ほの花の考えていることくらい手に取るようにわかる。どれほどお前を愛してると思っているのだ。
「不満〜…。」
「結婚したらそんなもん当たり前だろ?慣れろ慣れろ。」
「あ、……!そういえば!天元、私のこと奥さんって話したの?!どう言う反応したらいいか困ったじゃん!!」
次から次へと不満が溢れ出てくるのか可愛い顔をして苦言を呈してくるほの花だが、小型犬がキャンキャン言っているようにしか見えない。
「そう言うことにしといた方が手っ取り早かったんだ。別に良いだろ?遅かれ早かれそうなるんだからよ。」
「そ、そう…だけど…、一瞬誰のことかと思ったんだもん…。」
「お前以外に誰がいるんだよ。」
「え?だから…」
「あー、言うな。言わなくても分かるが、今更アイツらのことのわけがないだろ。」
本当ならばあの男にもそう言ってしまおうかと思っていたくらいだ。
しかし、ほの花は隠し事ができない人間だし、バレるのが分かっていたから言わなかった。
ただ俺の中では既に自分の妻だと紹介したいくらいなのだと分かって欲しいものだ。